非常事態宣言が出ている、というのは本来異常なことのはずなのですが、この宣言が出る前の、選挙に向けて2大政党勢力が日々争い、交通封鎖やホルタルを連発していた状態のほうがあまりに異常であったため、普通の人々の暮らしは今、かえって落ち着いています。このまま選挙管理内閣がずっと続けばいいのに、などと言っている人もいるぐらいです。

政党が手を出せないこの状況下、軍は警察の特殊部隊(RAB)と協力し、所属政党を問わず、裏金を集めて好き放題していたゴッドファーザーたちを各地で逮捕し、空港から高飛びしようとした者を取り押さえ、公用地を不法占拠した建物を取り壊し、とブルドーザーのごとく「大掃除」を推し進めています。うちの事務所の最寄りのタウンホール・マーケットという市場でも、今日RABがやってきて市場の外の道路に座り込んで野菜を売っていた人たちを追い出したそうで、道路がすかすかになっています。夜テレビニュースを見たら、ダッカでもっとも大きな生鮮市場のひとつ、カウラン・バザールでも大規模な露店や屋台の撤去が行われていました。

この機会に司法を行政から分離させよう、という動きもあり、議論が進んでいます。そのほかにも「今のうちに」とあちこちで“改革”が進行中。

いかにこれまで2大勢力のパワーゲームのためにできないことが多かったか、ということですが、軍やRABの強引な動きの中には、人権侵害とみられることも多々あり、これが悪いほうにエスカレートしなければいいけれど、と思っています。市場を追われた人たちもどうなっているのか…。

一般市民はしかし、今のところこの「大掃除」に概ね好意的な様子。汚職役人の逮捕などは、「どんどんやってくれ」というところでしょう。

そんな動きの中、グラミン銀行のユヌス氏も先週、「この国の政治家は金のために政治をしている。金がなければこの国では何も手に入らない」とAFP通信のインタビューで発言し、BNP幹部もアワミ幹部もカンカンです。BNPの幹事長、マンナン・ブイヤンが、「ユヌス氏のような賢い人がそんなことを言うとは遺憾」といえば、アワミ連盟の幹事長ジョリルも、「金がないと何も手に入らないと言うが、それじゃユヌスさんはグラミン・フォーンのライセンスを得るのに金を払ったんですかね」と仕返し。

何もかもが2大政党の勢力で二つに分かれていた社会が、今ちょっと違う形になり、汚職・腐敗にNO!の気風が強まっています。これがいつまで続くかですが…。

さて、今日は午後7時半からテレビで選挙管理内閣主席顧問が国民にメッセージを出す予定。選挙の日程が概ね決まるのかどうか。

追記:

夜8時半ごろから始まった主席顧問のファクルウッディン・アフマッド氏の演説では、

・政権移譲はできるだけ早い時期に行えるよう努力する

・選挙管理委員会は再編が必要

・IDカード導入については必要なステップを踏む

・汚職・腐敗と戦う

といったメッセージがありましたが、選挙はいつ頃を目指すのかについては明言はありませんでした。IDカードも導入を目指すのかどうかまだよくわかりません。「真に公正な選挙を目指して努力しますぞ」という決意表明、といったところでしょうか。