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街の脇役たち
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第5回: 援助関係者いろいろ

「日本人はカネをもっている」−外国人と接したことのある人なら一度は言われたことのあるこの台詞。日本人すべてが金持ちじゃないと言ってみたところで相手は納得しない。学生だって海外旅行をし、財政が厳しいの何のと言っても「援助」しにやってくるのが日本人だ。それに加えて昨今の出稼ぎブーム。「日本で5年働いたネパール人が建てた家だよ」と成金趣味の豪邸を指差さされると、貨幣価値が違うの、物価が高いのと説明する気力を失ってしまう。  スラムに関わるようになって2カ月ほどしたある日、住民組織から手紙が届いた。女性を対象にした洋裁トレーニングへの援助要請で見積書までついている。「ミシン36台、裁ち鋏が3丁、…布が140,000メートル!!」40世帯ほどのこのスラムに必要ない量だ。知人にこの手紙を見せたところ、このスラムに出入りしているネパールの地元NGO関係者の入れ知恵だろうと言われた。その後算出根拠や参加予定メンバーの名前を尋ねたところ、当事者である女性たちは関与しないでこの依頼が作られていたことがわかった。この件は実際にトレーニングをやっている他の地区を見学に行ってからみんなで考えようということでとりあえずおさまったが、その後もくだんのNGO関係者から資金援助を頼まれるのにはホトホト閉口した。

 私はネパールに来るまでフィールド調査の経験がなかった。そこで知人から実践経験の多いフリーランスの女性を紹介してもらった。この国には援助機関で経験を積んだ後フリーで働く人が結構おり、日当の相場は約1万円だと聞いていた。日雇い労働者の賃金が二、三百円、事務職の女性の月給が七、八千円という国での日当一万円はスゴイ稼ぎだ。この女性に一緒に調査地に行ってもらったのは午前6時半からの2時間、5日間程度だったが、それなりの金額を要求されることはやむを得ないだろうと思っていた。最終日に「これまでのお礼をしたいのだけど、私はネパールの相場がわからないからそちらから遠慮なく金額を言ってくれない?」と尋ねてみた。「え?お礼なんていらないわよ。時間も短かったし。私ね、これまで援助の仕事をしてきたけど村のことばっかりやってて自分の住んでるカトマンズのことなんて何も知らなかった。スラムに自分と同じシェルパ族の人がいて実にショックだったのよ。都市の貧困層と接するチャンスをくれてむしろありがたいと思っているわ」そう言われても何となく心配で「たくさんは払えないけど、ほんとにいらないの?」と聞いた。彼女は「大丈夫。外国のNGOからガッポリもらうから」と言って去っていった。彼女以外にもたくさんのネパール人に助けられた。世界銀行のプロジェクトで働いている男性は無料でスラムの地図を描いてくれた。援助関係者にもいろいろな人がいるものだ。ネパール人とは「お金持ちの日本人」としてしか付き合えないのだろうかと思った時期もあったが、調査の過程で友人として付き合える人もできてきた。スラムの住民とも同じような関係になれるのかが次の課題だった。


バックナンバー

バックナンバーは以下でご覧いただけます。

第1回 カトマンズの住民に
第2回 正体を明かせるか
第3回 日本のプロジェクトらしいぞ
第4回 一緒に考えよう
第5回 援助関係者いろいろ
第6回 私にできることは?
第7回 冬のスラム
第8回 責任をしょいきれない
第9回 お父さんあっちに行って!
第10回 政治活動じゃないのに
第11回 『コミュニティ』の幻想
第12回 外の力を借りよう
最終回 いつか主役に

田中雅子(たなか・まさこ)
1967年名古屋生まれ。大学卒業後、会社員を経て留学したイギリスでNGOの活動に出会う。帰国後、シャプラニールスタッフとして勤務した後、1995年よりネパール・カトマンズ在住。現地のNGOとともにスラムの調査を行った。1999年より日本赤十字よりバングラデシュへ赴任。2002年より国際協力事業団の専門家としてガーナに赴任。

 

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