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Home > 現地からの便り > 街の脇役たち(第4回)
街の脇役たち
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第4回: 一緒に考えよう

雨期の豪雨に見舞われつつ何とかスラムの訪問調査を終えた。お礼のために再度調査地を訪れ報告したが、集まってくれた住民の反応は今一つ。「あなたたちの住んでいる所では日雇い仕事をしている人が5人、収入は平均すると月に2500ルピーくらい…」こんな当たり前の話は聞きたくもなかっただろう。皆の関心事はただ一つ「日本人が何をしてくれるか」だけだ。無駄とは知りつつ「私は留学生に過ぎないからここに電気を引くことはできないし、ましてやお金をあげることなんてできません。ただ困った時に一緒に考えたり、何か役に立つ情報を持ってくることくらいならできるかもしれません」と正直に話した。そして、そのことを少しでも理解してもらえるように「参加型調査」を始めることになった。「参加型調査」というのは、活動の主役になる彼ら自身が、自分たちの問題点を自分たちで発掘する調査のことである。

初日の朝6時半、まず女性たちに集まってもらった。日雇いや賃仕事をする人たちの経済活動を邪魔しないため、毎朝6時半からの2時間だけを調査にあて、必要に応じて夜も出掛けた。1年間の就労パターンを地面に置いた大きな紙を使ってグラフに描いてみる。鉛筆も持ったこともない女性たちから数量に関する方法を得るのは難しい。紙切れを渡して、1カ月30日仕事にあぶれない月はそのままに、1日おきにしか仕事がなければ半分にちぎったものを月の名前の下に貼っていく。月の名前といっても文字は読めないから、お祭りの多い月なら杯を、雨の多い月には傘をといった具合に絵も用いる。夜には男性たちと同じ作業をする。すると男女は女性の終了を少なく見積もっていたことや、支出のパターンは民族によってかなり異なることなど、訪問調査では得られなかったことがわかった。当事者である住民も自分とは違う生活習慣を持つ人や見方の異なる人が同じ居住区に存在することに気付いたようだった。

一番人気があったのは、Mobility Mapと呼ばれる移動範囲を示す地図作り。病気になったときにどこへ行くかと尋ねれば、祈祷師だ、病院だ、薬局だと様々な答えが返ってくる。これを彼女たちなりの距離感で居住区からどれくらい離れているか示してもらう。月に1回はバスで街に出るという人は市の中心部の位置関係も把握しているが、年に1度出かけるかどうかという人は、「街」を示す色紙を隅っこに置く。隣同士に住んでいても彼女たちの頭にある移動空間は相当違いそうだ。カトマンズ盆地の先住民ネワールの女性達が地図を描いていた時のこと、ライ(ネパール東部の丘陵地帯を本拠地とする人々)の初老の女性が覗きこみ「私の番はいつ?」と尋ねた。時間もないし、世帯数の少ない民族の地図はいらないやと思っていた矢先のことだった。少数だからといって無視していたら「お役に立つ」どころか傷つけることになると思い、翌日彼女をはじめ、その居住区のマイノリティの女性たちの移動地図を作った。「皆がやっているのを見ていたら楽しそうだったから、ずっと待っていたんだよ」と昨日の女性は言った。そう言えば自分の番は終わっても、毎日見に来る人もいたし、女性たちを冷やかしに来て「へー、こんなにいろんなこと知ってたのか」と驚いた男性もいた。取りあえず無理やり参加してもらったわけではないことを知ってホッとした。


バックナンバー

バックナンバーは以下でご覧いただけます。

第1回 カトマンズの住民に
第2回 正体を明かせるか
第3回 日本のプロジェクトらしいぞ
第4回 一緒に考えよう
第5回 援助関係者いろいろ
第6回 私にできることは?
第7回 冬のスラム
第8回 責任をしょいきれない
第9回 お父さんあっちに行って!
第10回 政治活動じゃないのに
第11回 『コミュニティ』の幻想
第12回 外の力を借りよう
最終回 いつか主役に

田中雅子(たなか・まさこ)
1967年名古屋生まれ。大学卒業後、会社員を経て留学したイギリスでNGOの活動に出会う。帰国後、シャプラニールスタッフとして勤務した後、1995年よりネパール・カトマンズ在住。現地のNGOとともにスラムの調査を行った。1999年より日本赤十字よりバングラデシュへ赴任。2002年より国際協力事業団の専門家としてガーナに赴任。

 

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