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Home > 現地からの便り > ネパールつづれつづれ草(第1回)
ネパールつづれつづれ草
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第1回: 路上の牛たち

1999年7月5日、成田を出発、バンコクで一泊し、翌日ネパールの首都カトマンズに到着する。出発前の連日連夜の荷造りのため睡眠不足で、飛行機内ではほとんど眠り込んでいたので、夢の続きを見るようなボーッとした頭での入国であった。

空港を出るとホテルから来たたくさんの客引きの出迎えに会い、その中にカトマンズ事務所長の定松さんのさわやかな笑顔を見つけホット安心する。いつのまにか私たちの手荷物を数人の少年たちが抱え運んでいる。だが、私たちの宿泊するホテルから出迎えの人が来ているので「あなたたちの手伝いは要りません」と言うと、スッと引き下がる。ネパールの客引きは、あっさりしているんだなあ…と言う印象を受けた。

カトマンズ市は、その幅、南北に2キロ、東西に1.5キロ程で、こぢんまりとしている。道路には、バス、乗用車、テンプーと呼ばれる小型オート三輪のタクシー、そして自転車が入り乱れて走っている。カトマンズは交差点のほとんどがロータリー式なので、信号が少ない。信号があるのは数えてみると四カ所ぐらいではないかと思う。そのため、歩行者が道路を横断する時は、車が来ない隙を見計らって急いで渡らなければならない。歩行者優先なんて教習所では教えないのか、人が渡っていても、車はスピードを緩めず通り過ぎて行く。私は道を横断するタイミングがつかめず、いつも、同じ道を渡ろうとしている人を探し、その人の影のようにくっついて渡るのだが、カトマンズの人はさすがに慣れたもので、車が近づいて来ても悠々と渡って行く。その影の私は、アタフタとニワトリのようである。

さて、カトマンズの中心を南北に走るカンティ・パートという大通りをテンプーに乗って移動していた時である。突然、テンプーが大きくハンドルを切り、何かを避けたので「何だ?事故か?」と思いきや、そこには牛が数頭昼寝をしているのである。その通りに沿って草の生い茂った公園があるので、そこでお腹いっぱい食べた牛が道路へ出てきてしまったのか、道の真ん中にドデーンと横になっている。バスが通ろうが、クラクションを鳴らされようが、一向に構わずしっぽを振っている。近くに交通整理をしている警官がいるが手に負えないと諦めたのか、ほったらかしである。車を怖がらない牛にも恐れ入ったが、大通りの交通を遮るその牛を追い払わない人々の寛容さにも感心してしまった。牛は、ヒンドゥー教では、獅子、象、馬と並んで四聖獣の一つである。牡牛は生殖・繁栄の象徴、 牝牛の乳からはバター、ギー、ヨーグルトなどの乳製品が作られ人々の健康を支える母なる牛として人々から崇められている。

ある時、喉の渇いた子牛が共同水汲み場に水を求めてやって来た。すると、一人の女性が手で水をすくって、子牛に飲ませてやった。微笑ましい光景だなあ…と眺めていた。また、別の時、子牛がお腹を空かせて、バナナ売りの屋台に近づいて行った。だが、バナナ売りは、「シッ!シッ!」と追い払っていた。聖なる牛もただ食いは許されぬようである。

かつては、カトマンズも牧草地がたくさんあり、牛にとって過ごしやすい環境であったようだが、1990年の民主化以降、都市に人口が集中し、建物が増築され、また交通量も増え、大気汚染が進んだ。この10年で急激な変貌を遂げたカトマンズで、さぞかし窮屈な思いをしていることかと想像するが、牛も牛なりのペースで都会に適応しているようである。好奇心旺盛で人だかりに首を突っ込む子牛、人には全く無関心で夫婦(?)二頭連れだって草を食みながらゆったり歩く牛などを観察するのも面白いものである。  

さて、タイトルのつづれつづれ草ですが、かの有名な兼行法師さまから、拝借しました。カトマンズで生活する一人の日本人の目を通して見たネパール、人々の暮らし、文化などをお伝えして行きたいと思っています。カトマンズの机に向かって、心に移るいろんな出来事をそこはかとなく書きつづれば、あやしうこそものぐるおしけれ…。


バックナンバー

バックナンバーは以下でご覧いただけます。

第1回 路上の牛たち
第2回 きゅうりのカンクロー
第3回 大家さん家のアショック
第4回 今日もご飯はダルバート
第5回 今日のおカジャは何にしよう?
最終回 バス旅行のススメ

岡山純子(おかやま・じゅんこ)
1969年大阪生まれ。大阪芸術大学工芸科卒業後、青年海外協力隊員としてモロッコ王国にて陶器製作を指導。帰国後、陶器工房勤務などを経て、1999年7月より夫とともにネパールのカトマンズに在住。現在はトリブヴァン大学附属語学キャンパス・ネパール語学科に在籍中。

 

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