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Home > 現地からの便り > ダッカ「専業主婦」日記 > 第9回バックナンバー
バックナンバー

第9回: 『使用人のいる暮らし(その3)』

ところが日が経つにつれて、オハブ(ウチの「使用人」)がいることが、うっ とうしくなってきた。本当は、私では出来ないことや、私がやりたくないことま で手伝ってくれて、慣れないバングラデシュでの生活全般に渡って私を助けてく れる、という、オハブくんはありがたい、ありがたい存在なのだ。なのに、である。

オハブは(以前も書いたが)、ドライバー、家事雑用一般、の2つの仕事を掛け持ちするという、ちょっと変わった形で働いてもらっている。そのうちドライ バーの仕事においては、オハブと私の関係は比較的うまくいっている。問題は家事、雑用一般の仕事の方だ。  


オハブは、私がダッカに来るまでの数年間、独身男性の身の回りの世話をし、 掃除、洗濯、料理、と一通りの家事はなんでもした。住み込みだったので、いわばこの家が彼にとっても自分の家。電話もかかってくるし、友だちも訪ねて来る。 また、昼間は「主人」は仕事で外に出ているので、一人で家にいて、テレビを見 るも、ぶらりと外出するも、仕事がすめばあとは好きなようにできた(のだろう と想像している)。そこへ、私が「専業主婦」として来た。同時にオハブは住み込みでなく、通いになった。…まったく、「奥様」は四六時中家にいるから好き なように出来ないし、自分の部屋は無くなってしまったし…とオハブが思ったかどうか…本当の所は知らない。  


一方私の方は、バングラデシュに住むからには、と覚悟を決めて「使用人」のいる生活に突入した。

当時私はフルタイムの仕事を辞めたばかりで、さ〜あ、これからはハリキッて 「主婦業」をするぞ、と思ってダッカに来た。ところが来てみると、私よりもこの家のことをよく知っている「先輩」のオハブが、(彼のやり方で)家事をやることになっている。え〜、私は何をすればいいの〜という気分である。

また、東京では自由気ままにな一人暮らしだったので、結婚して夫と一緒に暮 らす、のはいいとしても、見ず知らずの言葉が通じない男性と、好きでもないのに同じ家で1日中、いっしょに過ごさなくてはならないのは、全然嬉しくない。 オハブは何も悪くないのだが、どうも私は「他人」が、わがもの顔でウチのなか をウロウロしているように思えて、耐えられなくなってきた。  

ベンガル語が十分にできず、いいたいことがうまく伝えられない。だいたい 「使用人」なんて、なんで雇わなくちゃいけないのよ、とぶつぶつ考えていたが、 結局、だんだんに話し合い、一つは、オハブと私が家事を分担することで大分す っきりした。オハブの仕事は洗濯(の一部)、食器洗い、床の拭き掃除、アイロ ン掛け、を日常にやり、その他買い物、家具や電気関係の修理を私が頼んだ時にすることになった。その分、私の分担は料理、洗濯(の一部)、掃除(の一部)、食器洗い(休日のみ)、そして時々大きな買い物をする、という感じになった。

また、今年の6月からはオハブを週休1日から週休2日に変更した。(妻の妊娠等)彼の事情により変更したのだが、じつはこれが、私にとってもいい結果を もたらしたのだ。私は週5日間だけ「使用人を使う主人」として仕事をし、あと 2日間はぐうたら主婦ができる!多分私は、自分の居場所を取り戻したのだろう。

今もって、いつもオハブとうまくいっているわけではない。3ヵ月に1回くら い、「あ〜、もうヤダ!!オハブいらないっ。私、自分で何もかもやるから、私を一人にして〜!」と思うことがある。波があるのだ。もちろん、これまでの間、オハブをクビにして、他の人を雇う可能性もあった。「使用人」を雇うこと自体、やめてしまうという選択肢もあった。が、もともと私は頑固だ。もうやだな〜と いう度に、夫に適当になだめられてしまった、というのもあり、またオハブが仕事ができて頭のいいヤツだ、というのもあったが、本当の所は、自分なりに納得がしたかったのだろう。バングラデシュに暮らす以上、「使用人」の問題ひとつ、 うまく対処できない、というのはいやであった。

ああでもない、こうでもない、といいながら1年半余が過ぎた。つい先日、雑談の途中でオハブが私にこんなことを言った。「…今回はもうすぐ日本に帰るで しょ、でもまたバングラデシュに来ることになったら、どうかまた、僕を探して雇って欲しい。…」え、え、ちょっと待ってヨ、またこんな大変な思いをするのはイヤだなあ…。でもどうやら、オハブは夫と私を「良いご主人」と判断してく れているようだ。…理由はともかく、そのことだけはとても嬉しく思っているところだ。


バックナンバー

第1回
第2回 ごぶさた〜!
第3回 「ボクシーシ」と「ガリ・ダオ」の間


97年〜99年滞在時の日記は以下でご覧いただけます。

第1回
第2回
第3回
第4回
第5回
第6回
第7回
第8回
第9回
第10回
第11回 私のベンガル語の先生
最終回 『アッという間の2年間でした』

 

白幡めぐみ(しらはた・めぐみ)
1967年千葉県生まれ。大学卒業後、アメリカのNGOでインターンとして1年間ボランティア活動に従事。帰国後の92年9月から97年3月までシャプラニールのスタッフとして東京事務局勤務。97年から99年までバングラデシュの首都、ダッカに在住。2001年8月から2005年12月まで、再度夫の白幡利雄(シャプラニールダッカ事務所長)とともにダッカに滞在。
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