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バックナンバー

第5回: 『バングラの台所で日本の料理〜その2、天然の蛋白源の話〜』

もともと私は料理が好きだ。それは、私たち夫婦の、丸〜い体形から想像できるかも知れないが、私も夫も食いしん坊だからだ。とはいえ、ここダッカの台所で食事の支度をするのはちょっぴりしんどい。

東京では、様々な食材をいつでも簡単に手に入れられた。野菜は形がそろっていたし、肉や魚は料理しやすい形になってスーパーに並んでいた。それがダッカでは、野菜は不揃いで汚れているから、洗ったり形を整えたりと手間がかかる。肉や魚は丸ごとの状態からさばく必要がある。その上、いつも限られた材料で何とか料理しなくてはならない。こんな環境に、ダッカでの生活が半年経ち、1年経って、ようやく慣れてきたところだ。 

しかし、いまだにダッカの台所で我慢ならないものがある。それは虫、だ。以前からゴキブリや蜘蛛くらいでは動じないつもりだったが、バングラデシュの虫たちの多さにはびっくりする。「もう、虫なんて大嫌い!」とつい言いたくなる。

野菜には、よく5ミリ位の白い虫がついている。これは虫喰いの部分もろとも包丁で取り除くことにしている。また、私はにょろにょろする虫がとくに嫌いなので、青菜を買ってくると、ミミズが出てきませんように、と祈るような気持ちで葉を一枚ずつ洗い、冷蔵庫にしまう。

ウチの台所にはアリもたくさん来る。今はアリが多い季節なので、砂糖、果物、甘いものはほんの数分間でも置いておくとあっという間にアリだらけになる。乾燥食品、食べ残しなども要注意。油断をするとアリで真っ黒になる。

虫たちとは他にもあらゆるところで出会ってしまう。こんなことがあった。

ダッカでは、小麦粉を(封をした)薄いビニール袋入りで売っている。私は東京でいつもしていたように、小麦粉を買って帰るとそのまま大きな瓶に移して使っていた。

数週間してふと気が付くと、瓶の中に黒い胡麻のような小さな虫がたくさんいる。不思議だった。粉を買った時には袋に封がしてあったし、私が保存している瓶には、きちんと閉まる蓋がついている。この黒い虫はどこから来たのだろう。

友人にこの話をしたら、粉は買ってきたらすぐ、ふるいにかけた方がいいと教えてくれた。「天然の蛋白源だけどネ」と笑いながら。

どういうことかと思いながら、目の細かいざるに通してみると、なるほど今までは粉に紛れて気付かなかったが、1ミリ程の白い虫がたくさんひっかかる。これが幼虫で、日が経つとあの黒い虫になるのだろうか。…だとすると、私はこれまで白い虫入りのホットケーキや天ぷらを作り、食べていたわけだ。

いや〜な気持ちになった。だがその瞬間友人の言葉を思い出し、「そうか、天然の蛋白源か。うまいこと言うなあ」と妙に納得した。

 それ以来、料理に虫が入ってしまっても、天然の蛋白源だからいいじゃないか、と自分に言い聞かせるようにしている。

追記:でも、これまでウチに食事にいらした皆さん、誤解しないで下さい。「天然の蛋白源」などと強気に言ってはみるものの、やっぱり虫はきらいです。虫入りの食べ物もきらいです。ですから、とくにお客さんに召し上がっていただく場合、虫1匹も入らないように細心の注意を払って料理しています。どうぞご安心くださいませ。

(そう、やっぱり料理は楽しいな。)

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第1回
第2回 ごぶさた〜!
第3回 「ボクシーシ」と「ガリ・ダオ」の間


97年〜99年滞在時の日記は以下でご覧いただけます。

第1回
第2回
第3回
第4回
第5回
第6回
第7回
第8回
第9回
第10回
第11回 私のベンガル語の先生
最終回 『アッという間の2年間でした』

 

白幡めぐみ(しらはた・めぐみ)
1967年千葉県生まれ。大学卒業後、アメリカのNGOでインターンとして1年間ボランティア活動に従事。帰国後の92年9月から97年3月までシャプラニールのスタッフとして東京事務局勤務。97年から99年までバングラデシュの首都、ダッカに在住。2001年8月から2005年12月まで、再度夫の白幡利雄(シャプラニールダッカ事務所長)とともにダッカに滞在。
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