| 第3回: |
『えーっ!丸ごとなのー
〜夕食のお買い物、肉・魚編〜』 |
私の経験では、「今晩のおかずは何にしようかな」と考えるのは夕方5時半では遅い。実際はそんなこともままあり、間に合わなくて「しまったぁ」と思うのだが、バングラデシュでは、できれば朝9時までにメニューを決めると良い。
なぜなら…1.食材を買ってから料理するまでに手間がかかるから。2.魚など「鮮度が命」の食材は朝のうちに買うべきだから。
私は肉や魚はリキシャで5〜6分のバザール(地元の市場)に買いに行く。そのバザールの魚売場は、入口を入って右手奥の一角にある。屋根付きの広い空間に日本の魚屋がごちゃっと寄り集まっている感じだ。木の台の上に大小様々な魚がずらりと並べて(あるいは積み上げて)ある。魚は冷凍されていないばかりか、氷などはなく、ナマである。カゴやケースには載せず、直接台の上に置かれている。蒸し暑いので、傷むのが早い。
店のおっちゃんたちが、威勢よく声を掛けてくる。客は値段交渉しながら、ぐるっとまわり歩いて目的の魚を買う。ところが困ったことに、私にはどれが何の魚なのかさっぱり分からない。店のおっちゃんに聞けばベンガル語の名前を教えてくれるので、とりあえずそれを覚えようとするが、日本で何という魚なのかは分からない。日本のスーパーでは、魚は綺麗にパックされていて、名前も書いてあるものだった…などと言っている場合ではない。
小魚はひと山いくら、で買えるが、大きな魚は丸ごとどーんと買う。切り身など無い。頼めば、見習いのような男の子が大きな包丁で切ってくれる。しかしそれはバングラの料理に合った「骨ごとブツ切り」(筒切り)であり、三枚おろしや五枚おろし、開き、といったものは期待できない。ウチで自分でやるしかない。
肉屋も同じ様なものだ。牛肉は牛売場に、(皮は剥いであるものの)部位の塊ごと置いてある(或いは吊るしてある)。実は、それがずっと連なっている様を見ると、私はここで牛を買う勇気がでない。隣が山羊売場だ。ちなみに豚売場は無い。バングラはイスラム教の国。普通のローカル・マーケットでは売っていないのだ。
鶏売場では、茶色で痩せた地鶏が篭の中でコケーコケー鳴いている。バタバタしてるのを買って帰り、家で自分で潰すのが一般的だ。しかし私は、バザールの前に店を構えている鶏屋さんで「外国鶏」と言われている白い鶏を買うことが多い。この店には「本日はキロいくら」と書いた紙が貼ってあり(65タカとか70とか)、鶏を買うと、1羽につき2タカで毛を剥いでくれるサービスがある。私は当然これを利用するが、それにしても「丸ごとのトリ」はずしんと重いのだ。
ウチでこれと格闘する。「う、ここが手羽だ、胸だ、いやモモだ」とブツブツ言いながら。お陰で1羽のトリからレバーがごく僅かだけ、とれることを知った。
さて、こんな調子だからバングラに来てすぐのころは、肉・魚料理がウチの食卓に上ることは稀だった。夫には今でも「最初の3ヶ月は肉も魚も食べてなかったよ」と言われてしまう。「そんなことはないよ」と反論するものの、当たらずといえども遠からず。だって…大変なんだもの…。
それで肉や魚はバザールでまとめ買いし、一気に全部サバき、小分けして冷凍するようになった。いや正直に言おう。私は、やはり肉も魚もサバくのは苦手なので、大きなところはベンガル人の友だちにやって貰っている。自分ではこまごましたところをするだけ。そして冷凍しておいた肉や魚は、使いたい日に使いたいだけ(朝から)解凍する。
私は結局、新鮮そのものの肉や魚をその日のうちに食べられるという喜びを放棄してしまったわけだが、「この国の主婦は大変だなあ。でも日本も昔はこういう状況だったのかなあ」などとぼんやり思っている。私にとっては目のところ、肉・魚編=「持つべきものは、ベンガル人の友人と冷凍庫」なのです。
97年〜99年滞在時の日記は以下でご覧いただけます。
白幡めぐみ(しらはた・めぐみ)
1967年千葉県生まれ。大学卒業後、アメリカのNGOでインターンとして1年間ボランティア活動に従事。帰国後の92年9月から97年3月までシャプラニールのスタッフとして東京事務局勤務。97年から99年までバングラデシュの首都、ダッカに在住。2001年8月から2005年12月まで、再度夫の白幡利雄(シャプラニールダッカ事務所長)とともにダッカに滞在。
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