どうも、コトバは苦手だ。英語もなかなか大変だが、ベンガル語も下手くそである。未だに言いたいことがうまく言えなくてイライラしたり、相手の言っていることがわからずに悔しかったり、ということの連続である。
そんな状態なので「ベンガル語を勉強してます!」と言うのは恥ずかしいが、ダッカで暮らし始めてすぐ、私は7ヶ月間ほどベンガル語の語学学校に通った。生徒は様々な国から様々な立場でバングラデシュに来ている人たちで、目立って多いのは欧米からのミッショナリー(神父やシスター、教会から派遣の医者や看護婦等)と、韓国などからビジネスで来ている人々である。基本的には授業は英語で進められる。上級クラスはベンガル語での授業となる。
学校には校長以外に先生が7人(うち女性が5人)いる。どの先生も教え方に味があってよかったが、その中でひときわ気に入った女の先生がいた。その先生に個人的にお願いし、昨年1月からは、自宅に家庭教師として来てもらうことにした。私は週2回、各1時間ずつという約束をした。家庭教師に切り替えてからは学校で勉強するのと違い、授業時間の半分は世間話になってしまうが、これがまた楽しい。ソファに座っておしゃべりに花を咲かせていればいいんだから、先生にとってはいい商売だなあ、と思うが、私にとっても不満はない。私が付き合っている他のベンガル人には望めない、「いざとなったら英語で説明してもらえる」という特典つきだし、いわゆる女同志の話も出来るし、私がつっかえつっかえ話してもじーっとガマンして聞いてくれるし…。
そんな彼女に「月刊V」に毎月原稿を書いていることを話したところ、興味を持ったようだ。「月刊V」の12月号を見せながら「今度、先生のことを載せようか」と言うと乗り気だったので、ちょっと彼女にインタビューしてみた。そのインタビューの一部を紹介しよう。
■プロフィール&家族■
めぐみ(以下M):お名前からお願いします。
先生(以下P):プロクリティ・レカ・チシムです。プロクリティは自然という意味です。
M:年齢は、おいくつですか?
P:私、何歳に見えるかしら?
M:(う〜ん、子どもがいて…)40歳?
P:あら、当たり。
M:ご家族は?
P:夫と、息子2人です。
M:ダンナさんは何をされていますか。
P:公務員です。国営放送の「ラジオ・バングラデシュ」に勤めています。
M:息子さんは何年生ですか。
P:上の子が医科大学の1年生で、下の子が小学4年生です。
M:実家はどちらですか。
P:マイメンシン県の北部、インド国境の近くです。(ダンナ様も同郷)
M:学歴を教えて下さい。
P:村の小学校に行き、村のミッション女子高、ダッカの女子大を出て、ダッカ大学で修士号を取りました。
M:何を専攻されたのですか。
P:生物学、しかも魚が専門だったのですが、もうみんな忘れちゃったわ。また勉強し直さなくちゃ…。
■仕事のこと■
M:いつから先生になりたいと思ったのですか?小さい頃から?
P:う〜ん、いや、街(ダッカ)に来て、結婚して、何か仕事をしたいと思って…そして就いた仕事が先生だったのです。10年前には、女性がオフィスで仕事をする機会はなかったし…。女性にとっては安全で自由に働ける、いい仕事だと思います。
M:お給料はいくら貰っていますか?…あ、聞いてもいいかな。
P:(笑いながら)給料は少ないので、恥かしくて言えないわ…。
M:今の仕事は好きですか。
P:そうね、楽しいです。
M:どんなところが楽しいのですか。
P:外国人に教えるのがいいですね。いろんな国の生徒が来るから楽しいです。毎回同じことを教えていても、生徒から違う話が聞けるし…。
M:ずっとこの仕事を続けていきたいですか。
P:職場の状況が変わらなければ、事情が許す限り続けたいです。
■「ガロ」について■
M:(先生は少数民族の「ガロ」なので)少しガロの話を聞いてもいいですか。ガロの人たちは、バングラデシュの中でどの辺に住んでいるのですか。
P:ほとんどが、シレット、マイメンシン、ジャマルプールに住んでいます。
M:ガロは何人位いますか。
P:さあ、人数は知らないです。
M:宗教はキリスト教ですよね。
P:そう、ほとんどがクリスチャンです。
M:「(いわゆる)ベンガル人」と「ガロ」のいちばん大きな違いは何ですか?
P:顔のつくりが違います。目が小さくて、鼻が低くて、モンゴロイドだもの。あとは、文化も違うし、…性格も違います。私たちは口数が少なく、静かで平和(温厚)な性格ですから。
たくさん話を聞いたが、そんなには書けないのが残念だ。月並みだが、将来の夢を聞いてみたところ、「夢、と言われても…。息子たちがよく勉強して、いい仕事に就いてほしい。あとは…何かしら」と首をかしげていた。でも、私だったら何と答えるのかな。やっぱり答えにつまってしまいそうだ。
97年〜99年滞在時の日記は以下でご覧いただけます。
白幡めぐみ(しらはた・めぐみ)
1967年千葉県生まれ。大学卒業後、アメリカのNGOでインターンとして1年間ボランティア活動に従事。帰国後の92年9月から97年3月までシャプラニールのスタッフとして東京事務局勤務。97年から99年までバングラデシュの首都、ダッカに在住。2001年8月から2005年12月まで、再度夫の白幡利雄(シャプラニールダッカ事務所長)とともにダッカに滞在。
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