また、ラマダン(断食月)がやってきた。今回は12月21日からの1ヶ月間がラマダンになった。なんでも、同じイスラム教の国でも、ラマダンの開始日は異なるらしい。去年はそのことにあまり気をとめなかった。しかし、今年はテレビや新聞でイラクへのミサイル攻撃のニュースを見ていたところ、米国大統領の「ラマダンが始まったら攻撃はしない」というコメントがあり、さらに、イラクではラマダンは12月19日から始まったと知った。バングラデシュとは2日のズレがある。あれ、なんでかな、と思ったのだ。
私はイスラム教徒でも、学者でもないので、実はラマダンのことを詳しくは知らない。だから、聞きかじったことで書いているので、もし間違っていることがあったら、ごめんなさい…(最初に謝っておきます)。
「年に一度、断食月(ラマダン)に30日間、断食をする」ことは、イスラム教徒にとって、「日に5回お祈りをする」「一生に一度メッカに巡礼する」といったことと並ぶ大切なことで、バングラデシュでも多くのイスラム教徒に守られている。
ラマダンはイスラム暦(太陰暦)に従い年に一度巡ってくる。イスラム暦では太陽暦より1年が11日ほど短い。だから、毎年ラマダンは11日ずつ早くにやってくる。今は冬にラマダンだが、15年〜20年後には、夏にラマダンとなる。
さらに、ラマダン開始日は、毎年ぎりぎりになるまで決まらない。なにしろ「太陰暦」だ。月が重要である。ラマダン開始予定日の前夜、空に新月が出ていれば翌日から、(雲などで)新月が見えなければ翌々日からラマダン開始、と決まっているのだ。
今回の開始日は、12月20日か、21日になる、ということは前々から分かっていた。しかし、12月19日の夜、テレビのニュースを見て笑ってしまった。「お月見委員会(本当は宗教委員会、とかなんとかいう名前だった…)」の面々がずらっと並んで難しい顔をし、「バングラデシュのどこそこで観察したが空に新月を見つけられず、どこそこでも新月が見られなかった。よって21日からラマダンとする」と大真面目に宣言したのだ。真面目な事柄だけど、大の男たちがお月さまがどうの、と言って深刻がっているようで可笑しかったのだ。
しかし…、先に書いた私の謎は解けなかった。なぜ、イラクでは12月19日からラマダン開始、と言っていたのか。あるいは私が聞き間違えたのだろうか。それともイラクの「お月見委員会(?)」は、月とミサイル攻撃の両方を観察して、そのようになったのだろうか…?
さて、ラマダン中は日が昇っている時間帯には一切飲み食いしてはいけないきまりだ。一日中何も食べず、水すらも飲まず、厳格に行なう人はツバさえも飲み込まず、夜間に食事をする。日中はタバコも吸ってはいけない。
イスラム教のきまりの1つに「日に5回のお祈りをする」というのがあると前述したが、バングラデシュに暮らしていれば、時間になると「アザーン」という、祈りを呼びかける放送がどこでも聞こえる。1日5回のお祈りの時間は新聞にも掲載されるが、とにかく国中どこにでもイスラム寺院があり、マイクを通した声が鳴り響くので、時計を持っていない人でも、新聞が読めない人でもお祈りする時間を逃してしまうことはない。1日5回、きっちり祈るか否かは、本人次第である。
1日5回のアザーンのうち、ラマダン中に人々が特に気にかけるのは、最初のと最後のだ。最初のアザーン(夜明け時)までに飲み食いを済ませなくてはならない。そして最後のアザーン(日没時)と同時に飲み食いを開始してよい。正確にいうと日没時のアザーンが流れている間に、断食を破るイフタールという軽食を食べる決まりだと聞いた。その後、夜の間は何時に何を食べても構わない。たいていは栄養のある夕食を9時か10時に食べ、翌朝の夜明け前の食事に備えていつもより早く就寝するそうだ。
ラマダンの間、私もよくイフタールをごちそうになる。私はいつもどおり一日3食、食事をしているので、イフタールまで食べてしまうのは食いしん坊みたいで気がとがめるが、「イフタールは皆で食べるもの。多めに作って誰にでも分け与える」という考えから、私にもごちそうしてくれるのだ。
イフタールは1日断食をした後の食べ物だから、いきなり胃に負担がかからないような軽いもの、ということだが、揚げ物など脂っこいものが多いのは不思議だ。
イフタールのあと、モスクにお祈りに行く(熱心な)人たちがいる。なんでもラマダンの30日間でコーランを最初から最後まで読むのだそうだ。家で読む人もいるが、時間がかかる。モスクではコーランを詠み上げてくれて、毎日通えば、30日でちょうど全部終わるのだそうだ。1回1時間半〜2時間とのこと。
ラマダンの間は政府も会社もNGOも、時間短縮業務になる。どこも3時か4時までで閉まる。なんだか、街中がウキウキしている感じだ。断食は楽しいのだろうか。
ラマダンのきまりで、こども、病気の人、生理中の女性など一部の人々は断食することを免除されている。貧し過ぎて断食出来ない人もいるだろう。しかし私のまわりの誰に聞いても「できれば断食を30日間成し遂げたい」という。一体なぜ1ヶ月間、断食するのだろう。
宗教的な意味としては、富めるものも貧しいものも、皆で空腹(飢え)を体験する。貧しくて食べられない人々のとを思う。また食物への感謝、食物を与えてくれた神に感する。だから1日5回の祈り以外にも、ラマダン中の特別の祈りを捧げるのだそうだ。
もっとも、動機不純なヤツもいる。私より10歳くらい若い女性が私に言いにきた。「この1年太り過ぎちゃったから、1ヶ月断食して痩せるの」だって。「夜中に食べ過ぎてもっと太らないように気を付けてね」と答えておいた。
97年〜99年滞在時の日記は以下でご覧いただけます。
白幡めぐみ(しらはた・めぐみ)
1967年千葉県生まれ。大学卒業後、アメリカのNGOでインターンとして1年間ボランティア活動に従事。帰国後の92年9月から97年3月までシャプラニールのスタッフとして東京事務局勤務。97年から99年までバングラデシュの首都、ダッカに在住。2001年8月から2005年12月まで、再度夫の白幡利雄(シャプラニールダッカ事務所長)とともにダッカに滞在。
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