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Home > 現地からの便り > ミルクティーとクリシュノチュラ(第5回)
ミルクティーとクリシュノチュラ
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第5回: 若者文化についてダッカ大学の先生に聞きました

先月バングラデシュの変化について書いたが、その続きで今回は若者に焦点をあてて書こうと思う。インタビューしたのはダッカ大学の30才前後の先生たちである。自分の10代の頃と今の学生たちとを比べて、あるいは先生達自身の20才代10年間でどんな変化があったか、ざっくばらんに話してもらった。内容は音楽やおしゃれについてなど余り重くない話題についてだが、先生方のカフェテラスで私たちのテーブルに入れ替わり立ち替わり何人もの人たちが座り、積極的に会話に参加してくれた。

まず、最近の音楽について聞かせて下さい。「タゴール、ノズルル、といったベンガル詩人たちの音楽を聴く人はとても少なくなっている。ヒンディー映画音楽、ウェスタンミュージックが人気である。バンドミュージックと呼ばれるポップスバンドが流行し、若者も自分たちでバンドを組んで楽しんでいる。」音楽の情報源はどこ?「都会では衛星放送が普及しているが、村ではラジオの歌番組を多くの人が聴いている。また、市場のカセットテープ屋から最大ボリュームで流行りの曲が一日中流れている。貧しい人はそこで聴いて覚え、口ずさんでいる。外国の音楽の海賊版も含め全てのカセットは35タカ(90円弱)と安いことも、バングラに様々なジャンルの音楽を広げさせた原因だと思う。」

ファッションについては?「縫製工場が増えたので、安い欧米の服が出回った。(傷ものをローカルマーケットで売っている)ジーンズ、Tシャツ、スカートを着ている若者が増えた。自分たちもジーパン、Tシャツで授業をするよ。以前は皆きちんとネクタイを締めて教えいてたのに。今は注意する人もいない。」「ヒンディー映画の影響で女性のショートカット、男性の長髪、ピアスというのが出てきた。女性のショートカットは良いと思うよ」(男性談)「15年位前からダッカだけでなく村でも美女コンテストが行われるようになっている。これもファッションに影響を与えた。」

食生活については?「海外生活の経験のある人は家庭でもパスタを食べたりするが、その人達を除けば家での食事は以前同様ベンガル料理である。しかし、朝は手作りのルティよりも買ってきたパンを食べることが増えたし、おやつはファーストフード店を好んで利用するようになった。ハンバーガーやピザを売るファーストフードの店が大繁盛している。もっとも、若い人はそういう店で恋人との時間を楽しんだり、時間をつぶしたりすることが目的だったりもするが。ともかくサイドフードに新しい食習慣が入ってきていることは確かだ。若者たちの多くが3食ご飯を食べるのを嫌がるようになった。」私は今まで、ベンガル人は食に関しては保守的であまり変化していないと思っていたが、手に入る食材も増えたせいもあって、随分変わってきていることが分かった。

宗教については?「宗教がファッションになってきている」えっ、どういうこと?「つまり断食月は断食をするし、金曜日のお祈りには行ったりするけど、心からやりたくてやってるんじゃない。他人にみせるためにやっているような傾向がある。例えば豚肉は食べないが、お酒は飲む。両方禁止されているんだから1つだけ守っても意味無いのに。人に親切にするとか、悪いことはしちゃいけないとかそういう教えは守ろうとしてない。面白いのはブルカ(※注)をかぶる女性が町で増えているんだ。一つのファッションとしてブルカを利用している。」私も一度あるお店でブルカ姿の若い女性に会ったことがある。一緒にいた友達はジーンズやスカートだったが、彼女が一際おしゃれで艶やかだった。

学生の人間関係は?「見ていると、お互いが妙に馴れ馴れしい。私たちが学生の頃は人見知りもしたし、お互いもっと距離を置いてつきあっていた。それが最近は男女間も同性同士もすぐ仲良くなる。」私のダンスの友達も10代の女の子同士が、挨拶変わりにキスをしたりしていて、少し違和感があった。バングラの習慣ではそんなのなかったはずだ。これも衛星放送で欧米の習慣を見て影響されているらしい。

言葉についてはどう?「バンドミュージックがバングラの音楽と美しいベンガル語に悪影響を与えた。」「教育を受けた子どもたちはベンガル語と英語をまぜこぜにしてキチュリ語で話している」キチュリ語って?「豆や野菜を米に混ぜて炊き込むキチュリ(ベンガル風おじや)のように、ベンガル語だけではコミュニケーションがとれない若者の言葉を指してキチュリ語って言うの。英語が話せるのは良いことだけど、ベンガル語のボキャブラリーが増えないのは問題だわ。」本当に、ベンガル語を守るために独立したはずなのにね。

学生達は将来についてどう考えている?「学生達はキャリアを大切に考えるようになった。」「以前は就きたい職業を聞くと医者か教師のどちらかだったが、最近はぐっと幅が広がった。例えばビジネスやNGOを含め、それぞれの道で花が開けば良いと回りの理解も寛容になってきている。」

先生方のおしゃべりは段々と、「近頃の若いモンは」的な乗りになってきてしまったが、バングラの若者達にこういった傾向があることは事実だろう。ただ一方で、他の学校の先生からはレンガ割などをしながら苦学している学生もいる、と聞いたし、宗教のことなどは個人差もあるだろう。また、いつか機会があったら村や都会の貧困層を対象に同じインタビューをしたら今回とは違った興味深い話が聞けるかもしれない。

(※注)ブルカとはイスラム教の女性が、外出時他人に姿を見られないように、着用する全身を覆う服。


バックナンバー

バックナンバーは以下でご覧いただけます。

第1回
第2回
第3回
第4回
第5回
最終回
  「石山民子流バングラデシュの楽しみ方の巻」
バラタナティアムの巻<その一>
ノクシカタの巻
変わり行くバングラデシュの巻
若者文化についてダッカ大学の先生に聞きました
実り多い写真展の巻

石山民子(いしやま・たみこ) 
1971年3月生まれ。埼玉県出身。社会福祉学専攻。大学卒業後、1995年7月より10カ月間、ボランティアと語学研修の目的にてバングラデ シュに滞在。帰国後東京都内にある老人保健施設に相談指導員として働く。夫であるシャプラニールスタッフで元ダッカ事務所長の筒井哲朗とともに1998年3月から2001年夏までダッカで暮らした。現在はアジア砒素ネットワークに勤務する。

 

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