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小松駐在員の日記

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洞窟探検ツアー

前回お伝えしたとおり、当初仏陀の生誕地ルンビニへ行く予定が突然のハプニングにより、ヒマラヤ山脈を望む景勝地として観光客にも名高いポカラへと行き先を変更することになりました。2泊3日で現地滞在は賞味1日という短い期間の割りにいくつか忘れられない出来事もあり、充実した旅行でした。

中でも最も強烈だったのが「洞窟探検ツアー」。当初は探検などするつもりはなくただ観光ガイドブックにも載っている洞窟を見物に行っただけでした。入場料10ルピー(1ルピー=約1.5円)を支払い中へ入ると、洞窟の入口で数人の男が「ガイドが必要だ」と言い寄ってきます。「必要ない」と言いながらそれを振り払い、外の売店で借りた懐中電灯で足元を照らしながら進んで行くと、およそ200メートルほど奥へ入ったところで行き止まり。途中何があるわけでもなく、天井に書かれた落書きを見ながらまた来た道を戻り外へ出るまで所要時間は10分程度、それほど期待はしていなかった我々でしたがあまりのつまらなさに苦笑してしまいました。

そんな我々の様子を見ていた先ほどのガイドの一人が寄ってきて、「コウモリ洞窟へ行かないか」と囁いたのです。「えっ、コウモリ?」普段家の周りで餌を獲りながら飛行しているコウモリはよく見かけますが、よく映画で見る「洞窟でぶら下がるコウモリの群れ」を見たことのない私にとってそのガイドの囁きはとてつもなく大きなインパクトを持っていました。大抵の場合、こうした商売上の誘いは断るのですが、次の瞬間には「大して変わらないものをまたわざわざ見に行くの?」といわんばかりの渋い表情をしている妻の説得にかかっていたのです。取り敢えずガイド料を値切るだけの平常心は残っていたものの、正直言ってかなりワクワクしていました。

車で2〜3分移動し、また入場料を払って中に入ると「ここは中に全く電気がないから」と言ってガイドがもうひとつ大きな電灯をどこからか調達してきました。そして洞窟の中に入るとすぐ、中腰にならないと進めないほど天井が低くなり、しかも足場がかなり悪いため4歳の娘を抱えて歩かなければなりません。コウモリにワクワクしていた私ですが、少々嫌な予感がしてきました。実は閉所恐怖症でしかも暗所が付帯するとその恐怖は倍増するのです。

洞窟の天井にぶら下がるコウモリたち。しかし天井が低い箇所はすぐに終わり、割と広い空間に出ました。そしてガイドの指差す方を見上げると、そこには数百、数千というコウモリの群れが天井にぶら下がっているではありませんか!しばらくそこでコウモリを眺めた後、ガイドの案内でさらに先へ進み2〜3mの壁を登って間近にコウモリを見られる場所まで来ました。「フラッシュをたいたらコウモリが起きるかな、バサバサっと・・・」と心配しながら写真まで撮った私はかなり満足しました。さあ、あとは洞窟を出るだけです。

洞窟の中でおびえるフリをする娘(隣は同行したレンタカーのドライバー)ところが、次にガイドが指示した行先には崖があるのみ。しかもその上には人が立てるスペースがあるかどうかも確認できません。先ほどの満足感は一瞬にして消え失せ、恐怖がじわじわと襲い掛かってきました。「大丈夫」というガイドの言葉を信じ、皆で娘を抱きかかえたり押し上げたりしながら何とか上へ進んで行きます。私も喉まで出かかった「俺は引き返す!」という言葉を飲み込みながら段々狭くなっていく穴を垂直に登りました。しばらく登ったところでガイドが「次が最後だ」と言いました。その言葉にホッとしたのも束の間、私の頭の上にはどう見ても人が通れないような小さな横穴があるだけです。私は恐怖を通り越し絶望しました。「なぜポカラまで来てこんな目に」「今岩が崩れて生き埋めになったらどうなるだろう」といった考えが頭の中に渦巻きます。

それでも何とか外へ出なければという一心でまず娘を押し上げ、私も後に続きます。「次の足をそこに乗せて・・・」というガイドの指示もほとんど耳に入らず、ひたすら体をねじりはいつくばって、ようやく外の景色が見えてきました。太陽の光がこれほど素晴らしいと思ったことはありません。洞窟を脱出したときには、ズボンは破れ服は泥だらけ。「もう一回行く」と言う娘と「川口探検隊みたい」とはしゃぐ妻を横目に、私は「もう2度と来ない」と心に誓うのでした。

写真1:洞窟の天井にぶら下がるコウモリたち。
写真2:洞窟の中でおびえるフリをする娘(隣は同行したレンタカーのドライバー)

(2004年2月19日 小松豊明)

バックナンバー

第一回:ツバメの家(2003/2/18)
第二回:ダルバートはわんこそばだ!(2003/3/8)
第三回:色の祭り−街が赤く染まる日(2003/3/17)
第四回:ネパールのピクニック(2003/4/15)
第五回:巨大な山車(2003/5/18)
第六回:フェアトレードデー(2003/5/18)
第七回:ダサイン Dashain(2003/10/11)
第八回:真夜中の銃撃戦(2003/12/16)
第九回:バンダ(2004/2/4)
第十回:ルンビニ訪問のはずが(2004/2/18)
第十一回:洞窟探検ツアー(2004/2/19)
第十二回:山車が倒れた!(2004/5/11)
第十三回:クマリの本(2004/11/24)
第十四回:ネパールでの復興支援(2005/2/2)
第十五回:ガネシュ(2005/8/26)

小松豊明(こまつとよあき)
シャプラニール・前カトマンズ事務所長。2002年12月〜2006年4月まで赴任。現在はクラフトリンク部門のチーフとして奮闘中。
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