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ツバメの家
シャプラニールのカトマンズ事務所からほど近いバグマティ橋を渡り隣のパタン市に入ったところはコプンドールと呼ばれ、手工芸品を扱う店(シャプラニールが扱う手工芸品の生産団体もここにショールームを構えています)や家具店などが軒を連ねる商業地区になっています。通勤路の中間地点でもあり私もここを良く通るのですが、仕事を終えての帰り道、ちょっと不思議なものを見つけました。
ある店の前を通りかかると、小さな鳥が出たり入ったりしているので何だろうと思い中をのぞいてみると、数百羽のツバメが羽を休めているではありませんか。最初は、廃業した店内にツバメが勝手に巣を作って住み着いたのかなと思ったのですが、よく見てみると棚やショーケースにはきちんと商品が並べられ、糞がかからないようにその上にビニールシートがかけられています。どういうことなんだろうかと不思議に思いながらそこを通るたびに様子を見ていたのですが、どうやら昼間は食品や日用品を扱う雑貨店として普通に営業しているのですが、夕暮れ時になるとツバメたちが一斉に戻ってきてそこで眠り、朝になるとまた出かけていく、つまりそこは昼は雑貨屋で夜はツバメのお宿に早変わり、ということのようなのです。
いつも店番をしている女性店主に話を聞いたところ、13年ほど前からツバメが住み着くようになったそうで、「何羽くらいいるの?」と尋ねると、「あなた、数えられる?」と聞き返されてしまいました。彼女は日暮れ時になると、戻ってくるツバメたちのために商いをやめビニールシートを店内に敷き詰めるのですが、ツバメたちもちゃんと心得ていて準備が出来るまでは上空を旋回しながら待機し、彼女がビニールをかけ終えると一斉に店内へ飛び込んできて、天井に張り巡らされた止まり木ならぬ止まり紐に上手に並んで羽を休めるのです。
ある日写真を撮っていいかと店主に訊くと、ショーケースの中からなにやらごそごそと取り出してきて、「これ、日本語でしょ?」というので見てみると、金属製のプレートに漢字で「燕子人家(ツバメの家)」と書いてあり、その下に台北市野鳥学会とあります。数年前にこのプレートをもらったのだそうですが、彼女はずっと日本語だと思っていたようです。
たまに物珍しそうに見物に来る私のような者が店の前をうろうろしても、彼女は一向に気にせず無表情に店番をしているのですが、実際に声をかけてみるとにこやかにいろいろと話をしてくれました。ガイドブックには載っていない、隠れた観光名所です。
写真1:店内の様子
写真2:店内のツバメたち
写真3:ツバメの家と書いてあるプレート
(2003年2月18日)
第一回:ツバメの家(2003/2/18)
第二回:ダルバートはわんこそばだ!(2003/3/8)
第三回:色の祭り−街が赤く染まる日(2003/3/17)
第四回:ネパールのピクニック(2003/4/15)
第五回:巨大な山車(2003/5/18)
第六回:フェアトレードデー(2003/5/18)
第七回:ダサイン Dashain(2003/10/11)
第八回:真夜中の銃撃戦(2003/12/16)
第九回:バンダ(2004/2/4)
第十回:ルンビニ訪問のはずが(2004/2/18)
第十一回:洞窟探検ツアー(2004/2/19)
第十二回:山車が倒れた!(2004/5/11)
第十三回:クマリの本(2004/11/24)
第十四回:ネパールでの復興支援(2005/2/2)
第十五回:ガネシュ(2005/8/26)
小松豊明(こまつとよあき)
シャプラニール・前カトマンズ事務所長。2002年12月〜2006年4月まで赴任。現在はクラフトリンク部門のチーフとして奮闘中。
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