救援よりも堤防を!被災住民の叫び
今朝のベンガル語紙、「プロトム・アロ(最初の光、の意)」の一面の写真に目が釘付けになりました。ネット版でも見られるので以下のリンクを見てみてください。
今回のサイクロン、Ailaによる高潮のために大きな被害を受けたクルナ県ダコープ郡で、川沿いに住む男性たちが必死の形相で川の堤防を直している写真です。スコップさえなく、まったくの手作業。泥を素手で掴んでは投げ上げ、素足で踏みしめて壊れた堤防を修復しようとしているのです。被災した彼ら、ろくに食事もとれていないだろうに、もう政府をいくら待ってもダメだ、自分たちでやるしかない、と腰まで水に浸かって、まるで賽の河原で石を積むような作業を始めたのです。
昨夜のテレビニュースでも、救援の食糧配給の列に並ぶ男性が叫ぶように訴えていました。「私が求めることはたったひとつだ。堤防を直してほしい。俺たちは何度も何度も救援の列に並びたくなんかないんだ。堤防をちゃんと直してくれ。ただそれだけだ。」
私たちが現在救援活動を行っているバゲルハット県ショロンコラ郡サウスカリ・ユニオンでも、約17kmにわたってバレッショル川の堤防がガタガタに壊れています。堤防といってもコンクリートなどが使われているわけではなく、土を盛り上げた土手です。2007年のSIDRのあと、この土手はついに本格的に修復されることがありませんでした。政府はいつ修復工事を始めるのだろう、と待っても待っても工事は開始されず、ついに修復されないまま今回のAilaの水害に至りました。
ショロンコラ郡の行政は今回のサイクロンAilaの被害を受け、地元のNGOを集めたコーディネーションミーティングで、参加したNGO関係者たちに要求しました。あんたたちで堤防を直してくれ、と。
しかし、私たちは知っています。SIDRのあと、堤防や道路の修復のためとして何十億という単位の資金が日本を含む先進国のODAからバングラデシュ政府に貸し出されたり供与されたりしたことを。いったいそのお金は何に使われたんだろう?道路や橋も重要だけれど、人の命を守るため、次なる災害を防ぐためには堤防は最優先で直される対象だったはず。しかし、今度のAilaの被害でわかりました。ショロンコラだけでなく、ポトゥアカリでも、クルナでも、SIDRで壊れた堤防は放置されてたんだ。
私たちのパートナー団体として現地で救援活動にあたっているJJSがざっと見積もったところでは、堤防の修復には少なくとも1kmあたり80万TK(約120万円)はかかるだろう、とのこと。17km直そうと思ったら、2千万円以上。とてもじゃないけど私らみたいなNGOの手には負えません。でも、SIDRのときがっぽり復興支援の資金を得たはずのバングラデシュ政府にとっては2千万円なんてはした金のはず。土嚢を積んだ程度じゃまた壊れるかもしれないけど、まったくやらないよりはずっといい。今朝の新聞の写真みたいに男たちが手づかみで泥を投げ上げるよりは、ずっとちゃんとした堤防修復ができるはず。1億円あれば5ヶ所直せる。2億円あれば10ヶ所直せるじゃないか。なんでバングラデシュ政府はやらないの?なんでドナー政府はバングラデシュ政府に堤防を優先させるように言わないの?なんで大金貸したあと堤防が直ってるかどうかチェックしないの?
私たちももっと声を上げるべきだったんだ。堤防が直ってない!このままじゃまた高潮の水が村の中に流れ込む!って言い続けるべきだったんだ。
このまま各地の堤防が直されなかったら、今年の秋のサイクロン・シーズンにもまた多くの人が高潮で命や家財を失い、救援が必要な事態になるでしょう。それ以前にも、次に大潮が来るとき、また壊れた堤防の隙間から水が村の中に流れ込むのではないか、と沿岸部の人々は恐れています。
今度の大潮は満月となる6月8日頃です。また川の水が溢れて被害が出ないか私たちも心配です。