SSC合格おめでとう
今日はバングラデシュ教育省が年1回実施する中等教育修了資格試験(SSC)の結果発表の日でした。バングラデシュの学校制度は初等教育5年、中等教育が前期3年、中期2年、後期2年の5-3-2-2制。今日結果発表があったSSC(Secondary School Certificate)というのは中期中等教育、つまり10年生までの課程を修了したことを証明するものです。10年生まで学校に行っても、この試験にパスしなければ修了証はもらえません。
結果発表は今日の午後4時。わが事務所にも家族の結果を待ってそわそわしている人が何人かいました。最初に私のところに「発表」に来たのは雑用係のトゥトゥール。「アパ!うちの妹がAマイナスでSSCに合格しました!」「わー、それはよかったね。Aマイナスなんてすごいね」「いや、まあまあです」
SSCは合格・不合格だけでなく、成績によってAプラス、とかBマイナスというようにグレードがつきます。Aマイナスというのはかなりいい成績。まあまあなんて言ってるけど、6人きょうだいの長男としてダッカに出てきた弟・妹たちの親代わりをつとめている彼にとっては相当うれしかったに違いありません。
「おー、トゥトゥール、お菓子の心配はしないでいいぞう~」(バングラデシュではおめでたいことがあった人がお菓子を皆にふるまう習慣があります)と冷やかす上級スタッフの声に、「週明けに持ってきます!」とニカッと笑顔。
次に「うちの娘もAマイナスでした」とちょっと照れくさそうに言ってきたのはプログラムオフィサーのサイフル。彼は娘さんの試験のとき、半休をとって試験会場に付き添っていました。「試験は本人ががんばるしかないけど精神的なサポートぐらいはね」と。試験のときの写真を新聞で見たら、会場の外は付き添いの親でいっぱい。SSCや後期中等教育の修了試験のHSCを子どもが受けるとき、会場まで付き添って応援するのは「心ある親なら当たり前」のことのよう。
テレビの夜のニュース画面ではSSCに受かってはしゃぐ生徒が大騒ぎ。小学校にあがる年は日本と同じ6歳だから、ストレートに進学すればだいたい15~6歳。イェーイとVサインで奇声を上げたり、輪になって踊っていたり、この年頃の子が制服で騒いでいる様子は日本とあまり変わりませんね。
でも、実はここではしゃいでいる子どもたちはバングラデシュではごく恵まれた子たちです。バングラデシュで教育に携わる700以上のNGO(シャプラニールも)がメンバーになっている教育推進キャンペーン団体のCAMPEが今年発表した中等教育についての報告書(Education Watch 2005)によると、バングラデシュの11歳から15歳の子どものうち、なんらかの中等教育を受けている子どもは45%。この中にはマドラサと呼ばれるイスラム宗教学校も含まれます。学齢期児童の就学率は8割程度と見込まれていますが、中学に入るまでにその約半数がドロップアウトしてしまうということです。
さらに中学の1年目にあたる6年生に入った子どものうち、10年生までいくのはその半数。そしてSSCやそれと同等とされるマドラサの中等教育修了試験Dhakilに受かる子は、わずか20%にすぎません。ですから、大雑把に計算すると、この年頃の子どものうち、中等教育を受けて10年生の修了試験にまで受かる子は約9%。10人に1人にも満たないことになります。
だから、トゥトゥールの妹が農村にいる両親と離れ、小さな日本のNGOの雑用係をする兄を頼ってダッカに出てきて、SSCにAマイナスで受かったというのは大変な快挙なのです。今頃きっと彼の家ではお祝いをしていることでしょう。
バングラデシュの教育事情はすこしずつよくなってはいますが、まだ多くの子どもや親にとって、高等教育はエベレストのように高い山です。その裾野にさえとりつけない、小学校にまったく入れない子どももまだ10人に1人や2人はいるのです。
今年はSSC受験者の合格率が60%を超えました。これは今の中等教育制度が始まって以来の快挙だそうで、テレビには試験結果をうやうやしく教育大臣から渡され、ふむふむとうなずく首相の姿がありました。しかし、それはあくまで「受験者の60%」。受験を断念した10年生もたくさんいての話です。
政府がやらなければいけないこと、そしてNGOができることはまだまだたくさんあります。
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追記:上の記事は22日の夜のTVを見て書いたのですが、23日の新聞をみたら、ちょっと数字に間違いがあったので訂正します。今回のSSCの全国での合格率は59.04%でした。一般のSSCと、職業高校のSSC(内容がちょっと違う)、あとマドラサのDhakil、その3つの試験をあわせた平均の合格率が62.22%だったということです。
それから、「制度始まって以来の快挙」というのは、全ての科目で80%以上の「GPA-5」というグレードをとった子の数が、今年はSSC,職業学校SSC,Dhakilあわせて30,490人で、今のグレード制度が始まってから飛びぬけて多かった、ということだったようです。GPA-5をとった生徒は昨年は17,276人。2002年にこの制度が始まったときは、わずか330人しかいなかったそうです。
これは実際「上のレベル」がますます上がっている、ということなのか、試験問題がパターン化して研究されてきた、ということか?そのあたりは不明です。