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犬の耳

ダッカ事務所には何度かご紹介したタイガーのほかにジェリーという黒い雄犬がいます。こいつはたぶんもう5歳ぐらいになる犬で、子犬のときに来たらしいのですが、エサ代がかさむことと番犬としてあまり役に立たないことから、ダッカ事務所のスタッフたちによる真剣な会議を経て、一度放り出されたという経験をもっています。

事務所の犬ジェリー.jpg

放り出されたあと、ジェリーは半ノラ化してその辺をうろうろしながら茶店の前でパンのかけらをもらったりして食いつないでいたようです。ダッカ事務所とジェリーの縁は切れかけていました。

ところが、私が最初にバングラデシュに来たとき、前々ダッカ事務所長だった筒井現事務局次長と道を歩いていたら、角を曲がったところにこの犬がいて、筒井氏の顔を見るなり耳をぴっと立てて「あっ!」という顔をしたのです。「あれ、今の犬前うちの事務所にいた犬ちゃうかな」という筒井次長。ジェリーは明らかに「みつけましたよ、おとうさん」という顔をしていたのです。

それから(だと思うのですが)ジェリーは再び事務所に来るようになりました。エサはやらなかったので、あくまでシェルターとしての利用で、日中よれよれと事務所に来ては昼寝している姿をよく見るようになりました。日に日に痩せこけて哀れなので、ついに私はポケットマネーでジェリーにエサをやることにしました。

エサをやるようになってから毛並みもよくなり体格もしっかりしてきたのはよかったのですが、この犬の問題は時々外でケンカをすること。強くもないクセにケンカして、傷をつくって帰ってきます。

先日は耳に大穴を開けて帰ってきました。本当に向こうが見えるような穴なのでぎょっとしました。私は一日事務所でベンガル語をしゃべっていても犬に話しかけるときは日本語になります。「おまえ、どうすんのよ、そんな耳に大穴あけて…。なんで弱いくせにケンカするのよ」と言っても、ポーカーフェイスのジェリーは痛くもなさそうな平然とした顔をしています。

この犬たちを時々洗ってやったりしているトゥトゥールは、「薬つけてやろうかと思うんだけど、タイガーが舐めちゃうんですよねー」というのです。確かに見ていると、若い方のタイガーが、ジェリーの耳の傷を毎日せっせと舐めてやっているのでした。

驚くことに3、4日もしたらジェリーの耳の穴はくっついてきました。あんなに破れかぶれの耳だったのに。犬の耳ってそういうもんなんでしょうか。タイガーがせっせと舐めてやったからか。それともノラ生活を経験したジェリーの生命力でしょうかね。

「人間の耳じゃこうはいかないよねー」と事務所の運転手やガードマンと話しながら、早くこいつに注射を打たなければ、と思うのでした。

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