船が最後に行き着くところ
チッタゴンに港があることは前にも書きましたが、ここには役目を終えて廃船にされる船が世界中から集まる船舶解体所があります。
巨大な船を解体するのはとても危険な作業。それにも関わらずここで働く人たちは、安全靴を履くわけでもなく、裸足に腰巻、といった軽装で、手作業で船を解体しています。大きな鉄板が身体の上に落ちてきたり、作業中に船が火事になったりして、大怪我を負ったり亡くなったりする人は後を絶ちません。アスベストなどの有害物質の被害も懸念されています。(インドやバングラデシュの船舶解体所では、今でも素手でアスベストを処理し、再利用しているそうです)
今回の出張の訪問先のひとつ、チッタゴンを拠点とする現地NGOのYPSA(イプシャ)は、様々な分野でなかなか刷新的な活動をしている元気な団体ですが、船の解体所で働く人たちの状況を改善するための活動もそのひとつです。
私もこれまでよく知らなかったのですが、YPSAによればバングラデシュで橋や道路建設などに使われる鉄材の大半は解体された船からリサイクルされたものだそう。少なくとも2万人が直接船の解体に従事しており、なんらかの形でこの産業にかかわっている人は25万人はいるとのこと。そんな中、この20年で少なくとも400人が作業中の事故などで死亡し、6千人が大怪我を負っているというのです。
今回はそれが直接の目的ではなかったので船の解体所は見ることができませんでしたが、解体所付近の道路の両脇には、解体された船から取り出された部品や機材などあらゆるものを種類別に売る店が並んでいました。


バングラデシュ内にこれだけNGOがたくさんあっても、こういった船舶解体作業員の人たちの労働問題をとりあげている団体は今のところYPSAだけだそう。彼らが国際NGOのグリーンピースなどと共同で行ったこの問題についての報告書や写真集をもらってきました。
表向きには毎年5%以上の経済成長を続けているバングラデシュですが、その陰には様々な産業を命がけで支え、手足を失ってもほとんど省みられることのない最底辺の労働者の人たちがいます。
追記(6/6):
Greenpeace、FIDH、YPSAの3団体が、昨年12月に「船舶解体問題に対する早急な世界的解決のための共同宣言」を出しており、日本の「化学物質問題市民研究会」というところが、その日本語訳をウェブサイトに発表していることがわかりました。日本の船の解体はどうなっているのか?これはもっと調べないといけないですね。