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ナスリーン・ホクさんを悼む

4月26日、バングラデシュでもっとも尊敬されていた女性NGOリーダーの1人、ナスリーン・ホクさんが悲劇的な事故で亡くなりました。47歳でした。彼女は国際NGO、アクションエイドのバングラデシュ代表をつとめていたのですが、それ以前にも女性の権利のためのNGOや障がい者支援団体などで活躍。とくに、過酷な人生を強いられた女性たちのために尽力した人でした。ジャイジャイディン ナスリン特集.jpg

彼女が亡くなった翌日から、シャプラニールのダッカ事務所のアドレスが登録されている様々なNGOのネットワークから追悼のメールが流れてきました。その分野は教育、障がい、災害対策など多岐にわたり、彼女がいかに広い分野で活躍し、信頼を得ていたかが伺えました。

私がナスリーンさんに会ったのは、彼女のお姉さんのシリーンさんの家で。シリーンさんも女性への暴力の問題などに取り組むアクティビストで、夫はゴノ・シャスト・ケンドロというバングラデシュでも草分けの医療NGOを創設したジャフルッラー氏。シャプラニールの大橋代表が彼らと親しいため私も紹介してもらい、何度かシリーンさんの家には晩御飯に呼んでもらったりしていたのです。

お会いした日のナスリーンさんは、1歳をちょっと過ぎた赤ちゃんを抱っこして、アクティビストというよりお母さんそのものの笑顔でにこにこしていました。「シャプラニールとアクションエイドは前にロヒンギャ難民の支援活動をいっしょにやったことがあるのよね。また何かあったらぜひ一緒に仕事したいと思っているのよ。」と話してくれました。

お会いしたのはただそのとき一度だけだったけれど、彼女の穏やかな笑顔と、赤ちゃんを抱いた幸せそうな姿が忘れられません。時折テレビなどで見る彼女は、凛として論理的に語っていたけれど、笑い声も豪快なお姉さんのシリーンさんに比べ、どちらかというと物静かな印象の人でした。

きのう、今年からシャプラニールと一緒に、使用人として働く少女たちのためのプロジェクトを始めるPhulki(フルキ)というNGOの事務所に打ち合わせに行きました。Phulkiの代表のスライヤさんは、もうお孫さんがいるようなお年の女性ですが、ナスリーンさんの話が出たとたん、「シリーンやナスリーンがやってきた仕事は私たちのバックボーンだった。ナスリーンとは気が合ってなんでもよく話したものよ。実質彼女はフルキのアドバイザーみたいなものだった。」と涙ぐんでしまいました。「彼女は声高に物を言うというより、黙々と仕事をして、そのあとで話し始めるタイプの人だった。自分はあまり表に出ずに陰からいろんな人や団体をサポートしていたのよ。今まで彼女がやってきた仕事、これからできたであろう仕事のことを考えると本当に辛いわ。」私たちは皆でしんみりしてしまい、なかなか打ち合わせに入れませんでした。

ベンガル語の週刊タブロイド紙、ジャイジャイディンの今週号は、「ロールモデル、ナスリン・ホク」と題した彼女の追悼特集です。様々な人が彼女の思い出を語り、彼女の最期のことも綴られています。ナスリーンさんが病院に運び込まれたとき、事故の知らせを聞いた人々が次々に病院の周りに集まってきました。NGO関係者やメディア関係者、友人たちももちろんいましたが、ごく普通の貧しい女性たち、男性からの暴力で顔や身体に硫酸をかけられたアシッド・サバイバーの女性たちや、障がいをもつ女性たちも集まり、彼女の容態についての知らせを息をつめて待っていたといいます。

ナスリーンさんがかつてアシッド・サバイバーの女性たちに語ったという言葉が紹介されていました。硫酸でただれた顔を隠して外出する女性たちを見て、こう言ったそうです。「なぜあなたが自分を恥じるの?恥じるべきなのはあなたたちに傷を負わせたこの社会なのよ。もっと顔を出して外へ出るの。バスにも電車にも乗って出かけるのよ。あなたが受けた傷を見て世の中の人は自分たちがいかに愚かかがわかるのだから。」アシッド・サバイバーの支援組織を立ち上げ、彼女たちを自宅に呼んで親身に世話をし、職探しに奔走した彼女だからこそ言えた言葉でしょう。

ナスリーンさん、もっとあなたとお話ししたかった。あなたのようなリーダーから学びたかった。
本当に残念です。ご冥福をお祈りします。

(2006年5月10日)

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