フェアトレード(Fairtrade、公正な貿易)とは、貧困のない公正な社会をつくるために、途上国の経済的社会的に弱い立場にある生産者と経済的社会的に強い立場にある先進国の消費者が対等な立場で行う貿易です。適正な賃金の支払いや労働環境の整備などを通して生産者の生活向上を図ることが第一の目的です。

フェアトレードのはじまり

1946年、アメリカのTen Thousand VillageというNGOによってプエルトリコの女性たちが作った手工芸品を本国で販売したのが最初の試みと言われています。1950年代には、イギリスのオックスファムが手工芸品の販売を始め、アメリカにフェアトレードショップの第一号が開店しました。1960年代になると、オランダなどヨーロッパで、手工芸品や砂糖などの販売を通じた途上国支援が広がっていきました。当初は手工芸品が中心だったフェアトレードの商品も、砂糖、コーヒー豆、紅茶など食品にも広がっていき、今では衣類、ファッション雑貨も増えています。

現在、多くのフェアトレード団体、企業がありますが、その成り立ちや目的は少しずつ異なっています。たとえば、シャプラニールはバングラデシュの村の女性が生活向上を目指して現金収入を得られるようにするために、身近な素材と技術でできる手工芸品生産を1974年に始めたのがフェアトレードの始まりです。農村開発の一環という捉え方で、世界の不均衡な貿易構造を是正しよう、公正にしようというよりは、目の前の女性の暮らしをよくしたいという想いで始まったのです。一方で、コーヒーやバナナなど世界的な市場の中で取引がなされている商品の生産者を考えて始まったフェアトレードは、貿易の構造そのものを公平、公正に変化させる必要があるとの問題意識が出発点になったと言えるでしょう。ただ、どちらとも生産者と消費者が対等の立場で商品のやり取りを通じて、貧困のない公正な社会を目指すという最終目標に変わりはありません。

10のフェアトレード基準(WFTO)

  1. 生産者に仕事の機会を提供する
  2. 事業の透明性を保ち、説明責任を果たす
  3. 生産者の能力向上に取り組む
  4. フェアトレードの普及・推進をする
  5. 生産者に公正な対価を支払う
  6. 性別に関わりなく平等な機会を提供する
  7. 安全で健康的な労働条件を守る
  8. 児童労働の撤廃に務める
  9. 自然環境に配慮する
  10. 信頼と相互尊重に基づいて貿易を行う

世界のフェアトレード・ネットワーク

最近では、日本でもフェアトレード商品をお店やイベントで見かけることが増えてきています。しかし、そのフェアトレード商品にはフェアトレードであるというラベルが付いているものと付いていないもの、付いていてもそのマークが異なるものがあります。その違いは何なのでしょうか。

WFTO(World Fair Trade Organization)

1989年に誕生したフェアトレード団体の世界的なネットワークです。フェアトレード商品を生産、輸出、輸入、販売、またはフェアトレードを推進する団体、人々がメンバーとなって活動を行っています。メンバーは上記の10の基準を守ることが求められ、商品ではなく団体としてフェアトレード認証を受けてきました。そのため、商品1つひとつにWFTOのラベルを付けることは認められてきませんでした。しかし、2013年のリオデジャネイロでのWFTO世界会議にて、メンバーになる手続きやフェアトレードの基準と照らし合わせた評価方法などを含めた新たな団体認証システム(Guarantee System)が導入され、それらをパスした団体は商品にWFTOのラベルを付けられることとなりました。

FLO(Fairtrade Labelling Organizations International)

FLOは、1988年にオランダに設立されたマックスハベラーというラベル運動を進める団体が始まりです。ラベル運動とは、フェアトレードを普及させていくためにはマーケットの拡大が必要で、そのためにはフェアトレード基準を設定し、その基準を満たした商品に認証ラベルを付けることでフェアトレード商品をわかりやすく紹介していこうという運動です。FLOは商品ごとにFLOの定めるフェアトレード基準を満たして原料調達、生産、流通がなされているかを認証しています。また、フェアトレードの啓発、アドボカシーなども行っています。

日本では、特定非営利活動法人フェアトレードラベルジャパンがFLOの一員として認証の窓口などを行っています。

ラベルの付いていないフェアトレード商品

フェアトレードとは法律や規定に則って始まった活動ではありません。そのため、団体によって理念や定義、基準が異なって行われてきています。日本でフェアトレード商品を販売している多くのNGO、NPOも独自の基準に基づき、フェアトレード商品の生産、販売を行っているのが実情です。消費者の皆さんにはわかりづらいという課題ではありますが、商品と一緒に説明されている、どういった人々がどのように生産しているかといった情報や販売しているNGO、NPOが信頼できる団体かなどの情報を吟味していただければと思います。

フェアトレードタウンについて

フェアトレードタウン運動とは?

地域の行政、企業・商店、市民団体などが一体となってフェアトレードの輪を広げることで、不利な立場、弱い立場に置かれた途上国の生産者の人たちの自立や環境の保護保全に貢献しようとする運動です。

この運動は2000年にイギリスで誕生し、今では世界23カ国に広がり、フェアトレードタウンの数も1200以上に達しています。その中には、ロンドンやパリ、ローマといった首都も含まれています。 日本では、2011年に日本初のフェアトレードタウン(呼び方としてはフェアトレードシティ)となった熊本以外にも、フェアトレードタウンを目指す市民活動が展開されています。

フェアトレードタウンの認定基準は各国で定められていますが、フェアトレードショップの数やフェアトレード運動の盛り上がり、自治体によるフェアトレードに対する貢献度などが判断基準となっていることが多いです。

日本のフェアトレードタウン

日本では一般社団法人日本フェアトレード・フォーラム(FTFJ)がフェアトレードタウンの認定事業を行っています。日本のフェアトレードタウンの基準には以下の5つがあります。

基準1:推進組織の設立と支持層の拡大
基準2:運動の展開と市民の啓発
基準3:地域社会への浸透
基準4:地域活性化への貢献
基準5:地域の店(商業施設)によるフェアトレード産品の幅広い提供
基準6:自治体によるフェアトレードの支持と普及

日本ならではの基準は、4.地域活性化への貢献です。フェアトレードが推進されているだけでなく、フェアトレードが地産池消やまちづくり、障害者支援活動などと結びつき、地域の経済や社会の活性化に役立っているかがポイントとなっています。フェアトレードはより地域、普段の生活に結びついて実践されてほしいという考えが反映されているのではないでしょうか。

シャプラニールとフェアトレードタウン

シャプラニールは、フェアトレードに取り組むさまざまな団体と協働しフェアトレードの輪をより広く強く広げる活動を行っています。神奈川県逗子市がふるさと納税の返礼品としてクラフトリンクの商品を採用した取り組み事例もあります。これはフェアトレード商品が日常生活にも取り入れやすい親しみやすいモノに変化していること、またフェアトレード運動を啓発するような働きにつながってきていると言えるでしょう。そして、これは日本独自のフェアトレードタウン基準4「地域活性化」への貢献の具体例として注目されています。