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本、メディア

2008年07月31日

明石書店、石井社長がマグサイサイ賞受賞

夕食後、家でメールをチェックしていたら、「明石書店の石井社長がマグサイサイ賞受賞!」というニュースが飛び込んできました。出版不況といわれる中、強い信念をもって人権問題などをテーマにした良書を出し続けてこられた石井社長のお顔が浮かんできて、なんだか胸が熱くなりました。本当におめでとうございます。

シャプラニールの歩みをまとめた本、「進化する国際協力NPO-アジア・市民・エンパワーメント-」も、ダッカ駐在員座右の書、「バングラデシュを知るための60章」も出版社は明石書店です。ふとダッカの自宅の本棚にある明石書店の本を数えたら、15冊ありました。ロバート・チェンバースの「第三世界の農村開発-貧困の解決 私たちにできること-」「参加型ワークショップ入門」や片倉もとこ先生が訳された「イスラームを知る32章」など、ここで活動していく上での教科書として大切な本たち、シャプラニールの大橋前代表の「『不可触民』と教育-インド・ガンディー主義の農地改革とブイヤーンの人びと」、高田峰夫さんの「バングラデシュ民衆社会のムスリム意識の変動-デシュとイスラーム-」、斉藤千宏さんの「NGO大国インド-悠久の国の市民ネットワーク事情-」など、先輩たちの貴重な研究。明石書店のような出版社さんがなかったら、これらの本とも出会えなかったかもしれません。日本の家に置いてきた本や図書館で読んだ本なども入れたら、学生時代から本当に多くのことを明石書店の本から学んできたんだなあ、と思います。

国際協力に携わる私たちにとってなくてはならない本をたくさん出してくれた明石書店、そして石井社長にあらためて感謝したいと思います。

気恥ずかしいので最後になりましたが、私も6年ほど前に翻訳したインドのウルワシー・ブターリアさんの本、「沈黙の向こう側-インド・パキスタン分離独立と引き裂かれた人々の声-」を明石書店から出版していただき、大変お世話になりました。その翌年、ウルワシーさんは第8回日経アジア賞・文化部門を受賞され、授賞式には石井社長もみえてとても喜んでくださいました。そうか、ウルワシーにもこのニュースを伝えなきゃ。

石井社長、そして明石書店さん、今後ともどうぞよろしくお願いします。これからもたくさん貴重な本を出版してください。

2008年01月16日

「復興支援」という言葉

昨夜は一晩中唸りながら、シャプラニールの会報2月号の特集原稿を書いていました。とっくに締切を過ぎていたのを担当者に頼んで延ばしてもらっていたもので、日本時間の今朝がほんとにほんとの締切。テーマはサイクロン被災者救援活動の報告です。

今回のサイクロンがどんなだったか、被災地の今の状況、これまでやってきた支援活動と今後のことなどについて3ページ程度にまとめればよく、写真も数点、ということでフツーに書けばたいした量じゃないし、これまでブログや内部の連絡用メーリングリストに山ほど書いてた報告をかいつまんでちゃっちゃとまとめればすむ話なんですが、結局唸って唸って午前3時すぎまで書いたり消したりしてました。

シャプラニールの会報は会員さんや支援者の方に会の活動についてご報告するもので、隔月でお送りしています。ブログやウェブサイトをご覧になっていない方は、この原稿で初めてシャプラニールのサイクロン救援の報告を読まれることになります。そう思うといい加減には書けません。この2ヶ月ぐらいの間に感じたこと、考えたことはいろいろあるのだけれど、サイクロンや救援活動についての基本的な情報も盛り込まなければいけないし、被災地で見てきたたこと、聞いたことも書きたいし、でもそれがどうしても決められた字数の中に入りきらなくて悪戦苦闘しました。結局、ある程度のところであきらめざるを得ず。最終的には月並みな原稿になってしまったかな...。とほほ。

書きながら、こういった活動の中でよく使われる言葉のいくつかに、自分が違和感や反発を持っていることに気がつきました。たとえば、「復興支援」。普段、英語の「リリーフ・オペレーション」を「救援活動」、「リハビリテーション」を「復興支援」と訳して使っていますが、この「復興支援」という言葉がどうも馴染みがよくない。なんというか、威勢がよすぎる感じがするんですね。「復興支援」というと、すごく「がんばれ、がんばれ」とドーンと花火を打ち上げるような感じがしませんか...。「興」の字のせいかしら。被災地や被災した人たちの今の状況に、この「復興支援」という言葉がなんだか合わない感じがするんです。

あと、使わざるを得ないときもあるけど、なんとなく最近使うことを避けている言葉は「心のケア」。心をケアすることはもちろん必要なんですけど、この「心のケア」という言葉があまりに安易に、ファッションみたいに使われすぎて、なんだか反発したくなるんです。「心のケア」なんてそんなに簡単じゃないよ、って。

被災地での「救援活動」や「復興支援活動」について、なんとなく感じていること、考えていること、たくさんあるのだけどまだ自分の中でまとまらずモヤモヤしています。

そんなとき、関西学院大学教授の野田正彰さんの著書、『災害救援』(岩波新書)を何度も読み返しています。奥尻や阪神大震災の被災地で現地調査を繰り返しながら考察されたことをまとめられたこの本は、国内・海外にかかわらず災害救援にかかわる人には必読の名著だ、と私は思っています。この前一時帰国したときやっと購入したのだけれど、ほんとに買ってダッカに持ってきてよかった。

奥尻での経験を書かれていることなど、今回私たちが救援活動を行い、今後も「復興支援」活動を行っていく予定のショロンコラ郡で起こっていたこととあまりにもそっくりだし、第1章「災害の構造」の中に書かれた「被災者役割と救援者役割」の箇所など思い当たることが多くてどっきりします。第5章「危機管理の焦点」、第7章「『心のケア』の本質」、第9章「救援の思想」などもとても参考になります。私たちがこれから何をしなければならないのか、考えるヒントになることが散りばめられている本です。

野田さんは以前ダッカ事務所にもいらっしゃったのに、私が不勉強でお会いしたときご著書をロクに読んでいなかったことが悔やまれます。ああ恥ずかしい。後悔先に立たず。

でも、他のときじゃなく、今この時期にこの本に出会えたことはよかったのかもしれません。書かれていることが染み込むようによくわかるから...。皆さんもぜひ読んでみてください。

2007年04月16日

感動の携帯電話接続インターネット

「私は今モーレツに感動している...」というのは言いすぎですが(なんだっけ、このセリフ。なんか漫画の主人公のセリフだったような)、かなり感動しています。グラミン・フォーンの携帯電話で、携帯のネットワークさえあれば、バングラデシュ中どこでもインターネット接続ができるようになったんです!!しかもいくらつないでも月額1000タカ(1タカ=約1.7円)で、これはこちらの普通のインターネットのプロバイダーより安いんです。

この話を最初に聞きつけたのは実は東京にいる前ダッカ事務所長の白幡職員。先日東京事務所で勉強会の講師をしてくれたバングラデシュNGO関係者から聞いたんだそうで、すぐメールで教えてくれました。こっちにいる私より情報が早かったのはさすがパソコン好き。

私はこれまで自宅で使っていたインターネットのプロバイダーがこのところサービスの質が落ち、スピードも遅くてイライラしてたので、早速最寄りのグラミン・フォーン・センターに走りました。そこで「携帯電話にパソコンをつないでインターネットができるようになったって聞いたんですけど何が必要なんですか?」と勢い込んで聞いたところ、ボランティアに興味があるという若いお姉さんが以下のことを教えてくれました。

必要なのは、
●モデム機能をもった携帯電話機
●携帯付属のソフトウェア
●電話とパソコンをつなぐケーブル

これらがあって、後払いのグラミン・フォーン契約者であれば、すぐ使えますよ~とのこと。

携帯でネット.jpg私が使っていたシンプルな携帯電話は、懐中電灯がついているのが停電のときや農村の闇夜で便利ではあったけど、これではネットには繋げない...。ということで、その日のうちに私はおニューの携帯電話をクレジットカードで購入。携帯電話のレベルによって接続スピードも違うというので、奮発してNokiaの最新のセットを買っちゃいました。これ、ラジオも聞けるし、カメラもついてるし、もちろんモデム機能もあるんです。パソコンと繋ぐケーブルや接続ソフトなどが入ったCDもぜんぶセットになっていました。こういう携帯電話は日本で買うより高く、贅沢品です。私が買ったモデルは2万タカしましたが、1万5千タカぐらいでも十分ハイスピードで繋げるモデルはあります。

写真=おニューの携帯をパソコンに繋いでシャプラニールのHPを見ているところ

このブログを読んでくださっている方にはダッカ在住の方や時々出張でバングラデシュにみえる方もいらっしゃるので、申し込みや設定の仕方もついでにかいつまんでお教えしますね(詳しいことはグラミン・フォーンのウェブサイトに出ています→コチラ)。 あまり関係ない方は読み飛ばしてください。

<携帯でインターネット接続できるようになるための手順>
●ソフトウェアをパソコンにインストールする
●使用する携帯から、8080に「Edge p2」とSMSを送る
●そうすると、「了解しました。72時間以内にEdgeサービスがactivateされます」という返事がくる
●8080に「Internet_ (携帯のメーカー名)_(品番) 」とSMSを送る (_はスペース)
 例:Internet nokia 6233
●そうすると、携帯に「PIN CODEを入力してください」という表示が出るので、「1234」と入力
●ここまでやると翌日あたりグラミン・フォーンから電話がかかってくるので、Edgeサービスがactivateされていることをそこで確認
●パソコンに携帯を繋ぎ、インストールした接続ソフト(Nokiaの場合、日本語表示も選べるのでカンタン)のアクセスポイントに「gpinternet」と入力。(ユーザー名、パスワードはなくても繋がる)
注1:ここまでやってもうまくつながらないときは、一度携帯の電源を切ってまたオンにすると繋がる
注2:これをやってもわからないときは、グラミンのカスタマー・サービス121に電話して訊く。

これでついに今日インターネットに繋げました。しかも今まで使ってたサービスよりずっと速いんです。日本のブロードバンドには及ぶべくもないけど、バングラデシュにしちゃこれは十分速い。わ~い、嬉しいわー。もう高くてサービスの悪いプロバイダーは解約しちゃおっと。

...と、しかし。ここでいくつか要注意事項もあったのでした。

ネットも携帯ですることになると、
●ネットに繋ぎながら電話で喋る、ということができない。
●携帯電話への依存度が高まるので、失くしたり盗られると大ショック。
●こういう多機能携帯は充電があまり長くもたない

1点目はネットに繋いでても電話がかかってくれば取れるし、スカイプなら使えるからそれほど問題ないし、3点目もスペアのバッテリーを買えばいいのだけれど、2点目はちょっと考える必要がありますね。地上電話線も引いてない我が家では、今は携帯とインターネットがべつべつで、2つの連絡手段があるけど、携帯だけに頼っていると、グラミン・フォーンののサービスがダメになると両方だめになる。とくに災害時など携帯が繋がらなくなる可能性大で要注意ですね。うーん、でもそのためだけに無駄にプロバイダーにお金払いたくないなあ。そんな大災害だったらプロバイダー接続もダメかもしれないし。

そして、「農村じゃプロバイダーがなくて事務所からメールも送れない、停電でパソコンも使えない」とぼやいている、シャプラニールの農村パートナー団体のマネジャーたちにも教えてあげよっかな、と思ってハタと気がついたのでした。

●農村でも携帯でネットにつなげるようになることがわかっていたら、県庁所在地などに開いたパートナー団体の連絡事務所(そこならインターネットが繋がるので連絡の拠点に、というのが大きな目的のひとつだった)はなくても済んだんじゃないか?

まあ、ネットを使うだけじゃなく行政機関や他団体との連絡拠点、という意味もあるし、周辺で既にいろいろ活動も始めているから、開いちゃってる事務所はいいんですけどね...。

この通信テクノロジーの進歩は、バングラデシュ農村部に拠点をもつローカルNGOには朗報ですね。NGOに限らず、農村にいながらネットに繋げられることで、できるようになる仕事は多いでしょう。携帯電話の普及だけでも、農村部の人々の出稼ぎや市場開拓の動きにかなりの変化をもたらしたようですしね。(パソコンやモデムつき携帯はかなりお金がないと手が出ないものではありますが...。)

日本からの出張者も私たち駐在員も、そのうち「農村部に出張なのでその間メールは見られません」と言えなくなっちゃいますね。いいんだか、悪いんだか...。

2007年03月26日

bracNetのチャリティ・セール

帰宅後ベンガル語TVニュースをつけて手抜きな夕食をとりながらぼーっと新聞を見ていた私。ふとある広告記事に目がとまって「おおっ!」と驚いてしまいました。その広告というのはこれ。

bracNetの広告.jpg

bracNet セレブの思い出の品セール 
あなたの好きなセレブの持ち物を買って、チャリティに参加しよう! 
アユーブ・バッチューのサイン入りギター!
アユーブ・バッチューがこのES-335チェリー・レッドを弾いてたの覚えてる?
今、このギブソン最高のセミ・アコースティック・モデルのエレキ・ギターがサイン入りであなたのものに! ほかにもたくさん・・・ www.bracnet.net

*アユーブ・バッチュー =バングラデシュの有名ロック・ミュージシャン

ネット上のチャリティ・オークションやチャリティ・セールは、日本や欧米ではもう珍しくもなくなりましたが、バングラデシュで見るのは初めて。bracNetというのは、バングラデシュ最大、かつ世界最大と言われるNGO、BRAC(ブラック)の“系列企業”のひとつで、インターネットのプロバイダー。BRAC本体は3万7千人以上の常勤職員を抱え、マイクロクレジットや教育プログラム、保健衛生プログラムなど大規模で質の高い活動をバングラデシュ全土で行っています。最近はアフガニスタンやスリランカでも活動を始め、「『南』出身の国際NGO」の道を歩みだしたところ。

それだけ大きなNGOなので、BRACそのものはチャリティ・セールの寄付など要らないレベルなんですが、サイトをみてみるとこのbracNet上のチャリティ・セールは、「独立戦争博物館」「身体麻痺者リハビリ・センター(CRP)」「アシッド・サバイバー・ファンデーション(顔や身体に硫酸をかけられた女性たちを支援する団体)」の3団体のためのファンド・レイジングなんですね。

品物を提供している有名人は俳優やミュージシャン、カリスマ美容師、詩人など。「50人以上のセレブが150点以上の品物を提供!」というから大したものです。値つけを担当する4人のうち2人はBRACの手工芸品部門、アーロンのショップ・マネジャーと商品管理マネジャー。企画の協力企業には人気のファースト・フード店や5つ星ホテル、協賛メディアにはこういった活動に熱心な新聞社やテレビ局、ラジオ局が並んでいます。

これ、どんなスタッフが企画したのかなあ。きっと若い人でしょうね。

前にも「汚職反対ロック・コンサート」や「我らバングラデシュ・バンド」のことを書きましたが、バングラデシュのNGO・NPOが国内の有名人や中流階級の若者などに働きかけて、活動に協力してもらおう、という企画が少しずつ出てきてますね。それもメディアを効果的に使ったものが目立ちます。企業の社会的貢献(CSR)もだんだん話題になってきているようですし。

以前は海外のドナーから資金をもらうことしか選択肢になかったのですから、これは大きな変化です。こういう「できることから始める協力」はシャプラニールがまさしく日本で呼びかけていることで、私も大いに関心のあるところ。

ウェブ上の有名人提供品のチャリティ・セール企画、目を留めるのはまだ都会の一部の層かもしれませんが、今後こういう動きがどんな広がりを見せるか、楽しみです。

シャプラニールももっとバングラデシュ国内で斬新な「市民巻き込み企画」ができるといいんだけどなあ。そういうところで日本と何かつなげられたら、すごく面白いんだけどー。

・・・こういう考えはもうちょと寝かせましょう。そのうち発酵するまで、ね。

2007年02月18日

薬草の村

今日は久々に何も予定のない土曜日。夜、TVのチャンネル・アイで名物番組、「Mati o Manushi(土と人)」を見ました。これはタイトルからも想像がつく通り農村のドキュメント番組で、いうなればバングラデシュ版「明るい農村」(ってNHKでずっと早朝やっていましたが、今もあるんでしょうか)。シャイク・シラーズという、これまたバングラデシュでは有名なTVディレクター兼レポーターが、国中の様々な農村を訪ねて行っては、そこで働く農民たちにインタビューする、という番組で、見ると何かしらいつも感心するような発見があります。元々バングラデシュ国営放送で1980年代半ばからやっていた長寿番組だったのですが、今はケーブルTV局のチャンネル・アイに移っています。バングラデシュの農業に革命的な影響を与えた番組だと言われています。

このシャイク・シラーズという人は、がっしりした体躯にシンプルなシャツとズボン、日に焼けた顔に地味な眼鏡、というおじさんなのですが、農村の家々や畑や茶店、ときにはズボンの裾を捲り上げて田んぼの真ん中までマイクを持って入り込み、実に気さくにうまく農民たちの話を引き出すのです。バングラデシュの農民にとっての知名度は、グラミン銀行のユヌス氏より上でしょう。

今日の番組のサブタイトルは、「薬草の村」でした。ナトール県のある村からのレポートだったのですが、ここは村中の人々がアロエやニームなど、様々な薬草を栽培しているのです。元々は村に住むコビラージュ(まじない師)が治療に使う薬草を栽培していたのが始まりで、彼に倣って村中が薬草栽培を始め、今は「薬草の村」として有名になり、ダッカやチッタゴンなど国中から商人が買い付けに来るようになったのだとか。このコビラージュはほとんど学校教育も受けていない人なのですが、彼が始めたこの村の薬草栽培は今は国の研究機関からも注目されるまでになっているんだそうです。

茶店でシラーズ氏を囲んだ村人たちは、薬草栽培はいい商売になるのだが、マーケティングのルートが確立していないことや、自分たちの知識が足りず、クオリティ・コントロールが十分できないのが問題、と話していました。農民たちがまったく自分たちだけで試行錯誤しながら工夫して、国中からバイヤーが来るまでにしたというのはすごいことだなあ、と感心しました。

開発に携わる人間は、下手をすると地域の人々が持っている存在的な力や知恵を軽視し、知識や技術は外から持ち込むもの、と考えがちですが、もっとこういう地元住民が自力で成し遂げた成功例に学ばないといけませんね。

前にこの番組を見たとき、シラーズ氏は日本の農村を取材していました(この番組は時々海外取材もあるのです)。日本の農協のシステムをレポートし、日本でもバングラデシュでするのと同じように畑に立って農家の人にインタビューしていました。シラーズ氏曰く、バングラデシュでは流通のシステムが十分整備されておらず、農作物の価格の調整も不十分なので、農民が不利な立場に置かれている。国がしっかり施策をたてるべきだと。

マイク片手に国中歩き回り、土とともに生きる人々の声を聞き、農村の生活向上のための提言を続けるシラーズ氏の姿を見ると、この国のメディアの良心を見るようで、なんだか元気が出てきます。

2007年01月19日

ダッカの人気FM放送

最近、バングラデシュのメディアにはいろいろ新しい動きがあって注目しているのですが、今日はそのうちのひとつ、FMラジオの話です。

ダッカではついこの前まで、FMといえば時間の限られたBBC放送しかなかったのですが、昨年からプライベートのFM放送がスタートし、ラジオを聴く習慣を忘れかけていたダッカっ子たちに新たなブームを呼んでいます。

現在、ダッカで聞けるFMには、昨年7月ごろ開局したRadio Today FM89.6と、数ヶ月遅れて開局したRadio Foorti FM98.4があるのですが、人気なのは断然Radio Today。彼らが目指しているのは「インフォテーメント」だそうですが、その通り、実用的な情報とエンターテイメントがなかなかうまくミックスされたプログラムです。

実用的な情報の代表は、30分に一度流れる道路情報、「ダッカル・チャカ(ダッカの車輪)」。ダッカの渋滞は日に日にひどくなる一方で、全然動かない道路でうんざり、ということもしばしば。そんな中、今どこが渋滞しているか30分ごとに教えてくれるこの放送は便利です。そして、市場価格情報を伝えてくれる「アージケル・バザール(今日の市場)」。今も私はこの放送を聴きなが書いてるんですが、今日の放送はミルプール11番街の市場から。砂糖やダール豆、コンデンスミルク、マスタード・オイルなど、市民の暮らしになくてはならない基本食料品の値段を伝えていました。このほか、1日4~5回のニュースも中立的でわりといい、という評判です。

エンターテイメントのほうは、流行の歌が中心ですが、話題のアーティストやビジネスマンを招待してのインタビュー番組もあります。デジタルの設備を備えているので音質もよく、私が日本から担いできたBoseのMusic Systemでもきれいに入ります。

もうひとつのRadio Foorti(フルティ=大きな喜び、英語で言うならJOY)は、音楽・エンターテイメント中心の番組構成ですが、彼らにとっての不幸はダッカを走っている車の多くが日本車で、FMが90.0までしかキャッチできないこと。これらダッカのFM放送が対象としているような中~上流階級の人たちの多くは車の中でラジオを聴くことが多いので、これはけっこう致命的。

それでも車以外にも、ラジオを聴く人が増えている理由のひとつには、若者を中心に人気を集めている携帯電話のラジオ機能があげられます。わがダッカ事務所の運転手のシポンもこのラジオが聞ける携帯電話を持っていて、ヒマな待ち時間はよくイヤホンをつけてFMを聴いてるんだそうです。電話がかかってくると自動的に電話に切り替わるんだそうで、なかなか便利ですね。

放送がキャッチできる範囲は狭くて、ダッカから80km圏内ぐらい。ウチの事務所のスタッフによると、私たちの活動地でもっとも距離的にダッカに近い、マニクゴンジ県のポイラ村でもぎりぎり聴けた、という話です。マイメンシン県のイショルゴンジではぜんぜん無理。ノルシンディ県でもダメでした。

ちなみにどちらも放送はベンガル語。DJのおしゃべりを聞くのはベンガル語上達にもいいかも。
ダッカに来られたらぜひ、聴いてみてくださいね。


追記(1月21日):今日、ノルシンディ県のPAPRIナラヤンプール事務所にラジオ・トゥデイを聴きながら行ったら、事務所の前までちゃんと聴けました。ノルシンディ県ダメ、というのは間違いでした。

2006年11月19日

ポジティブ・イメージ

明日からまた道路封鎖再開。2大政党とその連合勢力がそれぞれ相手を蹴落とそうといがみ合い、「健全な選挙を」という掛け声も虚しく、なかなか国の明るい未来が見えてきません。新聞を読んでいてもロクなニュースがなくうんざり。(それは日本でも同じかもしれませんが...)

grameen phone PR.jpg道路封鎖だの、抗議集会だの、路上で女性が酸をかけられただの、交通事故だの、という記事で埋もれた2日前の新聞の中ほどに、見開き全面まるまる使った大きな広告が出ました。鮮やかなセロリアン・ブルーの、無限大マークをつなげたようにも、プロペラのようにも見える新しいロゴに、"It's time to move forward"(今は前進の時)のコピー。グラミン・グループ傘下の携帯電話会社、グラミン・フォーンの広告です。

私が購読しているような英字紙を読む人はバングラデシュの中でも知識層。自国の混沌とした政治状況にうんざりしながら新聞を開く人の心をつかむ、うまい広告だな、と思いました。この広告、きのうも今日も少しずつ趣向を変えた全面広告が出ており、町中の通話カードを扱う店先にもこの新しいロゴを刷り込んだグラミン・フォーンのバナーが目立ち始めました。

写真の広告は今朝の新聞に出ていたもの。広告の後ろに、「バングラデシュ国民諸君よ、明るい気持ちで、希望をもって前に進もう」というユヌス氏の顔が見えてくるようです。

携帯電話ではグラミン・フォーンに次ぐ大手のバングラ・リンクも負けていません。こちらはテレビ・コマーシャルで前向きな変化のイメージを演出しています。このところずっと放映していたのは、「成功した漁師編」。ストーリーは以下のようなものです。

<日がな一日魚をとっては安い値で買い叩かれ、いつも暗い顔をしてため息をついている漁師の父。少年だった息子は父の明るい笑顔を見たことがなかった。父と二人、網を手に、とぼとぼと夜道を帰る少年...。(ここまでモノクロ映像) 

一転して明るいカラー映像。燦燦と降り注ぐ陽射しの中、精悍な漁師の若者が携帯を手に船の上で「オーケー、今いくよ」と話している。小船の上には大きな魚が満載。岸に着くと地元の商人が安値で買い叩こうとやってくるが、若者はそれに目もくれない。そこへ先ほど電話で話をつけた取引先が氷を積んだトラックでやってきて、魚を買い取っていく。川岸を「父さーん」と駆け寄ってくる小さな息子を抱き上げ、笑顔の青年。その手にはバングラ・リンクの携帯電話。>

現実はなかなかこう上手くはいかないでしょうが、父の世代と今は違う、これからよくなっていくんだ、というイメージを強く打ち出した印象的なCMです。数日前から、携帯で連絡を受けた女性ジャーナリストが現場に駆けつけて写真を撮る「女性カメラマン編」も放映されていて、こちらもなかなか新しい感じ。

テレビ・コマーシャルは時代を映すもの。バングラデシュのテレビCMにははっとするような垢抜けたものはまだあまりないけれど、その中でも最先端を行く携帯電話会社のCMには、こうあってほしい、という今のバングラデシュを生きる人々の夢が託されているような気がします。

グラミン・フォーンのあの新しいロゴやコピー、誰が作ったのかな。もしバングラデシュの広告代理店の仕事だったらなかなかのものだと思うけど。ホームページも一新されてました。見てみてください。→www.grameenphone.com

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藤岡前駐在員藤岡恵美子
(ふじおかえみこ)
2009年9月に駐在を終えてダッカから帰国しました。現在「全国キャラバン」で、北は北海道から南は九州まで全国行脚の講演会実施中です。
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