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講演会「民衆中心の災害対策:バングラデシュにおける挑戦と成果」

| 日時: |
2004年2月10日(火) |
| 場所: |
早稲田奉仕園小ホール |
| 講師: |
・Mr. Saidur Rahaman(Direcor, Bangladesh Disaster Preparedness
Centre)
・His Excellency Chowdhury Kamal Ibne Yusuf(Cabinet Minister, Ministry
of Disaster Management and Relief, Government of Bangladesh) |
| 主催: |
(特活)シャプラニール=市民による海外協力の会 |
 Mr.
Saidur Rahaman:
「バングラデシュにおける災害対策30年の経験から」
A. イントロダクション
災害管理(Disaster management)とは、1)災害時における対応(Response Management、以下RM)と2)貧困層対象としたリスク軽減(Risk
Reduction、以下RR)の二つから構成され、前者は、災害が発生した直後に政府等がどのような対処をするのかに焦点を当てており、一方後者は、Vulnerable
peopleである貧困層の災害によるリスク軽減を意味している。災害対策に使用される金額の殆どはRMに充てられ、RRに使用されるのは約1%相当とされている。
B. 主な災害について
バングラデシュでは洪水、サイクロン、干ばつが三大災害となっているが、これに加え、近年では河川の浸食により土地や住居を失う被害が増加している。1998年の大洪水では3200万の人口が被害を受けたとされ、(水害の原因となる)源流の94%は国外からのものであることから一国のみでは災害のコントロールが困難な状況となっている。また、1991年のサイクロンによる被害は公式発表で13万8千人とされ(実際には、30万人とも言われる)、家屋被害約96万件、穀物被害約92万エーカー、家畜(収入の糧)被害100万件以上とされている。
C.外国援助の用途
1988年の洪水災害時には、直後に国際援助機関においてハイレベル会議が行われた結果、たったの一日で5億ドル相当の資金が調達された。また、1991年のサイクロン災害の際には10億ドル以上の資金が集められた。これら資金の用途は主に被災救援・復興活動、インフラ整備等であり、結局これらはプロジェクトに携わる高給のコンサルタントに支払われた。結果として、貧困層対象のキャパシティービルディングに使用された金額は全体の1%以下とされている。
D.民衆の役割
上記のような、災害時資金が貧困層の能力開発に使用されないのは、民衆のパワーに関する認識の欠如が原因と考えられる。
例として、30万人を超える人災を被った1991年のサイクロン災害では、米国、英国、インド、日本、フランス、カナダ、イタリアなど各国から軍が派遣(日本に関してはRescue
Team)されたが、災害発生後に最初の派遣隊が現地に辿り着くまで18日以上が経過していた。この間に、被災者を助けていたのは被災者同士であり、人々はグループを組んで助け合っていた。また、1998年の洪水災害では、主婦、教師、学生、宗教指導者、商人などの民衆による支援が行われた。
このように被害を被った後にそれが回復するまで支え合うのは、被害を被った人々同士なのである。したがって、外国の救援が見落としがちである(概ね外国の救援は住民とりわけ貧困層のキャパシティービルディングを考慮に入れない傾向がある)人を中心に据えた災害対策、つまり住民の災害に対する能力開発が今後重視されるべきである。市民による災害前の準備対策として、サイクロン発生時の警告に関する普及活動があるが、これは過去30年間に3万3千人のボランティアによって実施されている実績がある。また、洪水災害に関しても、このような啓蒙活動のパイロット事業が教師、宗教指導者、民謡歌手、伝統的助産婦(Traditional
Birth Attendants、以下TBA)等を巻き込み行われている。
D.今後の課題
・ ドナーによる救援のフォーカスのシフト(RMからRR重視の支援へ)
・ 政策立案者の災害対策に関する考え方の変化
・ 災害対策の開発計画への統合
今日まで外国ドナーは災害後に救援を行うアプローチを採っているが、これを続ける限り住民のキャパシティービルディング向上を図るのは難しいのではないか。
 His
Excellency Chowdhury Kamal Ibne Yusuf:
「政府からの視点、特にバングラデシュにおける貧困層のリスク軽減を通じた持続的生計維持の試みから」
A. 過去における救援(および援助)活動の経験
被害が最悪とされた1991年のサイクロン災害発生後に、米国および日本政府の支援により被災者用に設置されたシェルターは殆ど利用されることがなかった。その理由として、これらのプロジェクトに携わったコンサルタントは住民の声を聞かずに調査および計画を行ったためである。また、過去の「Food
for Work」プロジェクトにおいて被援助側の援助に対する依存心が増長された。
B. SMART Project**
このような経験による反省から、コミュニティーをベースとした貧困層を対象の持続的発展と災害対策実施計画を2年間かけて進めている。この計画の目的は、災害リスクの軽減を通じた貧困層の持続的発展である。対象とする地域は、サイクロン、洪水および河川の侵食による災害を受けやすい25地域とし、初年度は5万人、翌年は10万人、5年目は100万人をターゲットとすることを目指している。主な活動は以下のものである。
1. Massive Public Awareness
2. Orientation to Government and other agencies staff members
3. Training of social change agents (teachers, religious leaders, TBAs,
folk singers etc.)
4. Selection and skill development of 50,000 beneficiaries
5. Development of household business plan
6. Preparation of household risk management plan
7. Provision of cash credit
8. Facilitate income generation activities (cattle, poultry, piciculture)
9. Link with support services (health, education and other development
areas)
C.プロジェクトの資金および特徴
当プロジェクトは1,000万ドルのコストを算定しており、Credit支援部分に関しては国内政府による調達、Administration &
Supervisionに関しては最大5%のサービス・チャージを課す予定となっている。当プロジェクトの特徴として以下の点が挙げられる。
・ Indigenous Planning
・ Sustainable Livelihood
・ Use of Relief Resources for Capacity Building
・ Involvement of Community Leaders as Volunteers
・ Integration of Risk Management into Rehabilitation/Development Support
これまでは、災害が発生する毎に住民の厚生(Well-being)が損なわれ、その後回復に向かっていたとしても災害による被害を被ることにより再度厚生は低下し、この繰り返しによって貧困ラインを上回ることはなかった。このSMARTプロジェクトでは、リスク軽減を図ることにより、災害の被害を受けても、長期的には住民の厚生を恒常的に上昇させることを狙いとしている。また、このような住民のキャパシティー・ビルディングに焦点を当てた災害予防対策は、コスト削減を可能とするものでもある。当プロジェクトの成功の秘訣は、上から(政府もしくは外国政府)押し付けられたものではなく、住民の話し合いといったアプローチを重視していることである。プロジェクトは帰国後まもなく開始される予定である。
**SMART (Sustainable, Measurable, Achievable, Replicable, Time-bound)
Project
(国際開発高等教育機構国際開発研究センター 加山美鶴)
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