ハシュ(15歳・男)
■家族構成
両親と6人きょうだい(男3人、女3人)。父親は日雇い労働者として様々な仕事をしてきたが、現在は健康を害し長男とともにジャットラバリ近くのドライパールに住む。
■ストリートチルドレンになった理由
家族を捨てることを決心した時、ハシュはわずか8歳だった。父親はスイッチ工場で仕事をするようにハシュにプレッシャーをかけた。ハシュはその仕事がいやだったし、暴力を振るったりひどい言葉を浴びせ掛けたりするボスが何よりも嫌いだった。それでも仕事をするしか選択肢はなかった。ぎりぎりの生活の中では、学校に行きたいというハシュの気持ちなど顧みてくれる人は誰もいなかった。せっかく通っていたBRAC(バングラデシュのNGO)の小学校も途中で止めざるをえなかった。一番上の兄は気性の激しい人で、ハシュはいつもその兄のことを恐れていた。母が亡くなり、家族との絆も失ってしまった。ある事件を巡って誤解が生じ村の若い者たちから脅かされたこともあり、命の危険をも感じた彼は脅迫された翌日に村を出て、それ以来ストリートチルドレンとなった。ジャットラバリ地域で生活するようになってからは少なくとも3年が過ぎている。
その後水運び(注1)の仕事を始めたが、罰と言って目に唐辛子の粉をかけるような人のもとで仕事をした。ハシュがすぐにその仕事を辞めたのは言うまでもない。ストリートでの生活は、少しずつだが確実な変化をもたらした。初めて味わった「自由」の味。誰にも邪魔されない生活は本当に素晴らしかった。食べ物を分かち、身を寄せあって寝た仲間との間に育つ友情。家や仕事場で感じた苦しみや心の痛みは、仲間と目的もなく歩き回るときだけは忘れることができた。
とにかく食べるために働いた。仲間と一緒に盗みもした。盗んだ野菜や果物を別の場所で売るのだ。武器を運んで一日に2〜500タカを稼いだこともあった。麻薬も売った。
注1:
水運び:都市でも水道の設備が整っていない場所があって、家事で使うための水をバケツで運ぶ仕事があり、子どもが担うことが多い。 |
■ハシュの今の仕事
卵屋で働くと朝で15タカ、夕方で30タカになる。くず拾いをすれば50〜90タカくらいは手元にはいる。今のボスはとても良い人で、彼のもとで働く子どもたちを罵ったり殴ったりしないし、給料もきちんと払ってくれ、ハシュも時にはボスに金を預けることもあるというほど信頼しているという。一日歩き続けるくず拾いはとてもきつい仕事だ。それでも、ハシュは自分が稼ぐ以外にストリートでは生き残る道がないことを知っている。
父親には時々会う。女きょうだいは結婚し、同居している兄はほとんど面倒を見ないので、病弱な父へ200タカとか500タカを渡してやるのだ。二度と家族と一緒に住まないと決めたハシュだけれど、やはり父親に対しては特別な感情があるのだろう。いつもジャトラバリのショマドマーケットで食事をする。たいていはご飯、ダル、卵を食べる。リンゴやブドウを買って食べることもある。稼ぎが良かった日は自分へのプレゼントに鶏カレーとご飯、ヨーグルトを食べるというが、映画も見るし、賭け事もする、タバコも吸うという彼の収入は、その日のうちに消えていく。
家族の元へは絶対に戻らない。父さん、きょうだい、だれもぼくのことを引き取りたくないどころか、家族として認めもしない。そんな愛情のかけらもない場所に戻って一体何になるんだ。
モニ(14歳・男)のケーススタディー
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